2016年8月に予定されている消費者物価指数(CPI)の基準改定をめぐり、エコノミストの間で議論が活発になってきている。火付け役は内閣府の統計委員会における、ある発言だ。
CPIの見直し方法を議論している6月25日の同委員会で、日本銀行の前田栄治・調査統計局長が「日本では住宅の老朽化が進んでいるが、家賃について住宅の品質劣化を考慮していないため、CPIに下方バイアス(真の物価上昇を過小評価、あるいは真の物価下落を過大評価する傾向)が発生している」と述べた。同じ家賃で品質劣化が進めば、家賃は上昇したのと同じというわけだ。このバイアスが修正されれば、CPI全体を0.1~0.2%ポイント押し上げる可能性があるという。
同委員会の委員長である西村清彦・東京大学教授も「帰属家賃が緩やかなデフレ傾向(0%程度)をもたらす錨(いかり)のように動いている」(7月6日付、日本経済新聞)と続いた。
一般的に、CPIには上方バイアス(真の物価上昇を過大評価、あるいは真の物価下落を過小評価する傾向)があることが知られている。実際には、価格が低下している品目の購入数量は増えるが、CPIを算出するうえでは、一定期間、購入する品目のウエートが固定されているため、購入数量が増えている価格低下品目の影響を過小評価してしまうのだ。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査室長は「CPIの宿命は上方バイアスで、下方バイアスが議論されるのは珍しい。前田局長の指摘は正論だが、物価上昇を望む日銀が持ち出してきた議論なので違和感がある」と言う。
確かに、日銀が指標にしているコアCPI=「生鮮食品を除くCPI」の5月分はプラス0.1%にとどまり、日銀が目標に掲げる2%には程遠い。折しも日銀は7月の金融経済月報から「生鮮食品とエネルギーを除く」物価動向を掲載し始めた。これを使えば、5月の物価は前年同月比0.7%の上昇となる。
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