「物価ははっきりとプラスに転じている」。先月28日、大阪で行われた講演で、黒田東彦・日本銀行総裁は断言した。
コアCPI(生鮮食品を除く総合消費者物価指数)の底ばい傾向が続く中、黒田総裁が引き合いに出したのが「東大物価指数」だった。消費者向けの物価動向を表す新たな指標として、エコノミスト、日銀関係者の間で注目を集めている。
東大物価指数は東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授らが開発、2013年5月からネット上で無料公開を始めた。全国約300店舗のスーパーマーケットのPOS(販売時点情報管理)システムを用いて、数量と価格を集計し指数化する。
CPIの更新頻度は月に一度なのに対し、毎日更新される速報性が最大の特長だ。加えてPOSデータの特性上、商品の価格・販売数量がセットで入手できることも強みだ。CPIで集計されるのは価格データだけであるのに対し、東大物価指数は価格変化が需要に与えている影響もダイレクトに分析できる。
街角のスーパーでは順調にデフレ脱却
14年4月に消費増税がなされたとき、東大物価指数は一時的にハネ上がった(図表1)。小売店は3%増税分の価格転嫁を図ったのだが、すぐに反落した。消費の反動減で想定以上の買い控えが起こったためで、遠のいた客足を呼び戻すべく、大胆なセールで訴求せざるをえなくなったためだ。
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「昨年までは、政府の物価目標に対して私も懐疑的に思っていた」と渡辺教授は言う。しかし今年に入ってから様子は一変、4月から明確な上昇傾向に転じている。特に乳製品やコーヒー、パン、卵の値上がりが大きく寄与する。基本的な原因は円安による輸入物価上昇だが、賃上げによる需要増にも支えられており、単なるコストプッシュ型のインフレでもないと渡辺教授は指摘する。
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