日本銀行が掲げる2%の物価上昇率目標の達成が遠ざかり、次の節目である10月の「展望リポート」発表時に追加緩和を行うか否かが、市場関係者の間で議論されてきた。しかし、今は大勢が「追加緩和なし」という見方で固まってきたようだ。
理由の一つは、政府が輸入インフレを加速する、さらなる円安を望んでいないこと。足元では、日銀の狙いに反して物価上昇率の低下が、消費の持ち直し、景気の下支えに寄与しているからだ。
もう一つの理由は、日銀が「量的・質的金融緩和」(QQE)で行っている年間80兆円の国債購入が壁にぶつかることだ。2015年度の新規国債発行額は37兆円。昨年10月末の30兆円の追加緩和を可能にしたのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が30兆円の保有国債を売却し、株や外貨建て資産を購入すると決めたこと。16年にはそうした新たな玉がない。
日銀の国債の保有比率は14年末で残高全体の25%に達し(図1)、民間の預金取扱金融機関の放出も限界に来ているとみられる。資本規制上、株や為替などのリスクを安易に取るわけにはいかないからだ。巨額の国債を保有するゆうちょ銀行も同様の事情である。
しかも、日銀の政策の効果への疑問が高まっている。QQEの狙いは、第一に長期の名目金利を押し下げること、第二に国債からリスク資産へ民間資金のシフトを促すこと、第三に人々のインフレ期待を高めることだが、実際に効果があったのは先の二つまで。三つ目は不確かであり、実際の物価の上昇は円安や消費増税の効果が大きい。要は、日銀の政策がもたらしたのは円安と資産バブルにすぎない。
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