2020年までの財政健全化計画策定が大詰めだ。議論中の歳出削減案は医療・介護が中心で、年金は切り込み不足に映る。なぜか。
そのカギは、04年年金制度改革で世界に先駆け導入した新スキームに隠されている。このスキームには、まず年金の負担額(保険料、国庫負担)を先に固定してしまい、その総収入と収支が一致するように、給付額を自動的に削減する仕組み(マクロ経済スライド)が盛り込まれている。
これらは約100年間の年金財政計画の中で実行され、現在の少子高齢化・経済停滞見通しの下では当然ながら、負担固定の総収入は低迷する。給付はこれに合わせて削減されるため、14年の年金財政検証では、将来の所得代替率(給付水準)は14年度の62.7%から、楽観的な経済前提で50%強、悲観的な前提では40%前後まで低下すると指摘されている(標準世帯の場合)。
軌を一にして、図表1のように年金の給付費(対GDP〈国内総生産〉比)は12年度の11.2%から25年度には9.9%に減少する見通し。つまり、給付の自動削減メカニズムが導入されたため、年金で追加の歳出削減策を打ち出す必要性は薄まっているのだ。むしろ、政府は十分な給付のために標準世帯の所得代替率50%を目標としており、大半の有識者は給付底上げこそが急務と訴えている。
拡大する
こうした中で年金において歳出削減策をひねり出そうとすると、無用な誤解を招く可能性がある。その典型が支給開始年齢の引き上げだ。
約100年間の総収入が固定された中で支給開始年齢を引き上げると、平均余命に基づく平均受給期間が短くなるため、個々人の年金月額がその分増加するだけで、トータルの年金給付は総収入と一致したまま変わらない。
6月1日に公表された財務省の財政制度等審議会の建議は、支給開始年齢引き上げの必要性を主張しているが、この引き上げを行っても年金給付総額は不変である点も明記している。財務省としては、支給開始年齢=引退年齢と考え、それを引き上げることで高齢者就業による所得税などの税収増、医療費の抑制につなげたいようだ。
この記事は有料会員限定です
残り 641文字
