東京証券取引所においてコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)の適用が開始され、コーポレートガバナンス改革は新たな局面を迎えた。相当数の会社が、複数の独立社外取締役の導入を決めており、政府主導の制度改革が企業活動に大きなインパクトを持ちうることに、あらためて驚かされる。
コーポレートガバナンス改革が目指している方向の一つは、外国企業に比べて低いとされる、日本企業の自己資本利益率(ROE)を高めることにある。実際、ROEが改善している企業もあり、改革が実態を動かしつつあるように見える。ROEを高めることができれば、そこから日本全体の経済成長につながることも期待されている。
しかしながら、詳細に見ていくと必ずしも手放しでは喜べない状況にあることがわかる。ROEは、簡単にいえば利益を資本の大きさで割ったものであり、分母を小さくすれば高めることができる。具体的には自社株買いを行い、企業内のキャッシュを株主に還元する形で資本を減らせば、ROEを高めることは可能である。これは、資本の効率的利用を促すという面では効果があるが、企業の生産性自体が直接上がっているわけではない。
社内に有効な活用先がなく、眠っているキャッシュなのであれば、それを還元された株主がより有効な形で活用することで、経済全体の生産性にプラスの影響を及ぼす。しかし、仮に国内企業のほとんどが自社株買いを行う状況であるならば、有効な投資先は国内にないことになり、海外の投資に流れてしまって、GDP増大には貢献しない。
したがって本質的には分子のほうを高めることが必要になる。それには大きく分けて二つの方策があり、その一つは、分配構造を変化させることである。たとえば賃金を引き下げ、配当を増やせば、一時的にROEを高めることはできる。しかしこれでは企業の長期的な成長にはつながらないだろう。
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