大きく変化する世界経済を前に、今後はリスクを積極的に取る経営が必要だといわれることは多い。しかし、リスクを取る経営を遂行する際に実際に求められる判断は、どこまで浸透しているだろうか。
たとえば、50%の確率で、100の企業業績が3倍の300になるような投資機会があったとしよう。ここで企業業績が何を指すか細かい点は問わない。とにかく企業の収益状況を大きく拡大させる機会が存在し、賃金も配当も3倍にできるチャンスがある。ただし、その一方、50%の確率で業績は大きく低下して0になってしまい、会社は市場から退出せざるをえなくなると仮定する。
リスクを取ってこの投資を行えば、期待値で見れば150になりうるから、リスクを取る価値の十分にある投資にみえる。が、読者の皆さんはこの投資を実行できるだろうか? 実は、日本企業の、少なくとも大企業の経営幹部は異口同音に、このような投資の実行は難しいと答える。この例を、成功確率が90%で業績が10倍になると変えても、答えは同じである。
それは、会社が潰れる可能性がある程度あるような投資は、現実にはとても実行できないと考えるからだ。
これを、日本はリスクを取れない、事なかれ主義の経営者ばかりだからととらえるのは、やや早計だろう。実際、失敗して業績が低下するにしても、雇用維持が可能だとすると、多くがリスクを取るほうを選択する。
日本では、経営幹部だけでなく従業員全体が、雇用維持をとても重視する傾向がある。その結果、経営マインドとして、雇用に負荷がかかるような意思決定はできるだけ避けるという意識が強い。つまり、リスクを取る経営といっても、実現できているのは、大きな雇用不安を自社内に生じさせないという範囲でのリスク選択にすぎない。
この記事は有料会員限定です
残り 707文字
