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工作で誰もが使う「ヤマト糊」の圧倒的強さの秘密 家訓「一代一起業」が生んだイノベーション

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  • 田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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創業123年。事務用液状のりでおなじみの、あの会社です(写真:neko10(ねこてん)/PIXTA)
老舗企業=お堅い会社。そのイメージは正しいとは言えない。むしろ、何度も危機を経験している老舗企業ほど、生き延びるための柔軟性を持っている。
事務用液状のり国内シェアナンバー1のヤマト糊を手がけるヤマト株式会社も、そんな老舗企業の1つだ。創業123年。シェアナンバー1を獲得した背景には、柔軟な社風があった。『何があっても潰れない会社』から抜粋して紹介する。

前代未聞の「腐らないのり」

創業123年、数々のイノベーションと共に歴史を紡いで人々の生活に浸透し、今なお事務用液状のりにおいて不動の国内シェアナンバー1を誇る企業がある。ヤマト株式会社(以下、ヤマト)である。

企業名でピンとこなければ、円錐状の透明な容器にオレンジ色のキャップの事務用液状のり、あるいは緑色のチューブ容器に黄色のキャップの工作用のりといえば、日本に住む人なら誰もが思い当たるだろう。

幼いころに手をベタベタにして、あの工作用のりを使っていた記憶があるし、今も仕事などで封書を送る際には、あの事務用のりを使っている、そんな人も多いはずだ。これらの製品をはじめ、さまざまな種類ののり、テープなど、接着・粘着商品を企画・製造・販売しているのがヤマトである。

その歴史は意外にも、ある小売商の挑戦から始まる。1899(明治32)年、両国で薪炭商を営んでいた木内弥吉は、炭の小分け販売用の袋に使うのりがすぐに腐ってしまうことに悩んでいた。当時、のりの原材料は米だった。つまり炊いた米と同様に保存がきかず、のりは数日で傷むものだったのだ。

一計を案じた弥吉は有識者から知識を集め、のりに防腐剤を添加した。防腐剤の刺激臭を消すために香料も入れた。さらには、腐らずいい香りがし、そして固まらず保存のきくのりを完成させた。これが「ヤマト糊」の起源である。

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【商売を引き継ぐ子がなかったために訪れた転機】

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