ガテン系企業が「野球選手」を好待遇で迎える訳 社会人野球「冬の時代」にあえて参入を目指す

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日本晴れ硬式野球部のトライアウトの様子(写真:筆者撮影)

昨年12月15日、まだ辺りが薄暗い早朝から、東京都大田区の大田グラウンドにはトレーニングウェアやユニフォーム姿の若者たちが三々五々集まってきていた。2021年から社会人野球への参入を目指す、株式会社日本晴れ硬式野球部のトライアウトが行われるのだ。

社会人野球の環境は年々厳しさを増している。「会社が給料を払って社員身分のアスリートにスポーツをさせる」という日本独特の社会人スポーツは昭和の時代までは「福利厚生」の一環であり「社員のロイヤルティ、団結心」を高めるうえで意義があるとされた。

しかし、年功序列、終身雇用が崩れるとともに「社員がこぞって自社のチーム、選手を応援する」という文化は衰えた。また外資系の経営者の多くは「企業スポーツ」に理解を示さなかった。

「冬の時代」を迎えた社会人野球

2009年には名門、日産自動車硬式野球部が休部となるなど、社会人野球は「冬の時代」を迎えた。廃部、休部に追い込まれるチームや、クラブチームに転換して独立採算制に切り替えるチームも増えた。

日本野球連盟(JABA)に登録されている社会人野球チームは1993年には317チーム。このうち企業チームは46.7%の148、クラブチームは53.3%の169だったが、2018年には353チームの内、企業チームは28.0%の99、クラブチームは72.0%の254になっている。

クラブチームの選手は原則として給料がない。アルバイトやほかに会社勤めをするなど、別途報酬を得て野球を続けることになる。

筆者は昨年、社会人野球もいくつか取材したが、「野球部を存続させるためには、野球をやっているだけではだめだ。地域貢献活動などもして、会社のCSR(社会貢献活動)の一環として認めてもらわなければ」と危機感を募らせる指導者もいた。

しかし日本晴れの硬式野球部は、従来の企業チームでも、クラブチームでもない。新しい社会人野球のあり方を志向している。

同社は建設現場の足場や鉄骨の組み立て、コンクリート打設などを行う「とび職人」の会社だ。いわゆる「ガテン系」。かつては「3K(きつい、汚い、危険)」の代表格のような業種ではあったが、近年ではそのマネジメントは大きく変貌している。

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