為末大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2020年12月現在)。現在は人間理解のためのプラットフォーム為末大学(Tamesue Academy)の学長、アジアのアスリートを育成・支援する一般社団法人アスリートソサエティの代表理事を務める。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著作に『Winning Alone』(プレジデント社)、『走る哲学』(扶桑社)、『諦める力』(プレジデント社)など。

 

chapter.01より抜粋

引退後の肩書、第2の人生

為末 なんかこういうのって、肩書って、説明しなきゃいけないものって役に立たないじゃないですか。だから、わかりやすいのでポコンッって。そう考えると、どういう現状から見ても、元陸上選手っていうのがいちばんわかりやすいかなぁと。

たぶんアスリートの引退後の人生っていうのは、いくつかわかりやすいパターンがあって、コーチになったり、協会とかの運営に携わっていく道、それからメディアの領域ですね。テレビに出たりとかっていう道。

それ以外は社会に入っていくということなんですけど、コーチになっていくってところはたくさん人もいらっしゃるし、なんか、結構七面倒くさいことも多いんですね。ちゃんといろいろやんなきゃいけないことも増えて、これはできないなぁと思って。

メディアの領域に出ていくっていうのでいくと、なんか、うまく自分がやれる気もしなかったし、ワクワクしないっていうのもあったかな。じゃあ、それ以外に何かできることがないかなっていうのを模索して始まったのが、引退後の人生で大きかったです。

スポーツをどうしようっていう発想はあんまりなくて、社会をスポーツでどうしようかっていうことを考えていたので、必然、いわゆるアスリートのキャリアとはちょっと違う道になったのかなって。

【タイムテーブル】
00:11~ 引退後の肩書、第2の人生
01:54~ 現在の活動について
03:02~ 教育理念
03:46~ 子どもにやる気を出させる方法
05:31~ 「褒める」と「放任」
06:46~ 目標設定で必要な視点
08:14~ どう成長を促すか
10:05~ 成長に必要な要素

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chapter.02より抜粋

教育現場のバーチャルとリアル

為末 インタラクティブ性と五感の情報。オンラインでいくら情報伝えられても、触覚とかそういうものって難しい。

有名なのでいくと、カクテルパーティー効果っていって、みんながパーティーをしているときに、目の前の人の声しか聞こえてないんですけど、後ろの人が、「為末が」って言った瞬間に俺の話かって気がつきますよね。これって不思議なことで、今までは聞こえていたのかっていうと、意識に上がってない。

何で名前呼ぶと意識に上がって聞こえるようになるのかっていうのは、要するに、人間は何に意識を向けるかが、その人に聞こえたと認識させていて、でも実際には、聴覚にさまざまな情報が入ってて、さらに卓球の選手とかは、耳をふさいで打つとちょっと下手になるんですけど、これは、選手が見えたって認識しながら、打った瞬間の音も同時に、判断に入れてる。

こういう情報を断ってしまうことがオンラインで、動画で送るっていうのは、相当な情報をカットして、視覚と音の一部だけしか伝えていないので、これは情報としては少ない。だから臨場感がない。

インタラクティブ性っていうのは、目の前で、そういう五感を使った情報のやり取りをしながら、「ん?なんかちょっと違う」とか、「ん?この表情が少し納得してないんだ」とか、そういうことを通じてアプローチすることは、いっさいできない。

【タイムテーブル】
00:11~ 人はなぜ、学ぶ必要があるのか
01:59~ 教育格差は是正されるべきか
02:19~ 「ICT教育の可能性」と「教育者」
03:41~ 教育現場のバーチャルとリアル
06:14~ ICTでスポーツは変わる?

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