改革はいつ終わるのか、平井ソニーの再挑戦 2期連続の最終赤字、汚名返上へ課題は多い

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平井社長就任直後の12年度、営業利益は2265億円と急回復した。だが、それはニューヨーク本社ビルや保有していたディー・エヌ・エーの株式など2000億円を超える資産売却益によるカサ上げの効果が大きい。

本当に復活できるのか。目下、推し進めているのが構造改革だ。

7月に、PC事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに譲渡する。同月にはテレビ事業も分社化する予定で、人員削減や賃金体系の見直しに着手する見通しだ。売り上げ重視から採算重視に転換することで、仮にテレビ販売台数が計画を下回っても、「市場の変化に柔軟に対応し、損益インパクトを抑える体質になってきた」(平井社長)と自信を見せる。

国内外で人員削減

テレビを含むエレキの採算改善でカギを握るのが、海外を中心とする販売会社の固定費削減だ。今回、販社コストが2900億円に上ると初めて公表。人員削減などに取り組み、15年度までに費用を2割削減するとの方針を打ち出した。すでに米国の販社では、約3000人の従業員の3分の1を削減するなど、手をつけている。

一連の構造改革を主導しているのが、吉田CFOだ。かつて出井伸之元社長の社長室長を務め、子会社のネット接続大手ソネット社長としても辣腕を振るった。その手腕を買われ、昨年末に平井社長から本社に呼び戻された。

ソニーにとって本社の固定費も13年度1450億円と大きい。今後、本社の間接部門の費用も、15年度までに3割減らす計画だ。「本社には余っている人材が多い。吉田氏はそこにメスを入れようとしている」(同社社員)。

一連の構造改革や事業の減損などを合わせ、前期と今期で計3000億円超の費用を計上する。15年度以降は1000億円以上の費用削減効果を見込む。

今回の経営方針説明会で、15年度に4000億円規模の営業利益を目指すと公表した。「目標が高すぎる」との声もあるが、今年度の営業利益計画1400億円を達成できた場合、15年度は費用削減効果で1000億円プラス、PC事業の収束による効果で約1000億円プラス、さらに構造改革費用の減少などを加味すれば、達成可能とそろばんをはじく。

「14年度は私自身の責任として、15年度以降の成長のために、構造改革をやり切ります」。そう言い切った平井社長。就任3年目となる今年度が信頼を取り戻すラストチャンスだ。

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2014年6月7日号〈6月2日発売〉掲載の「核心リポート02」を転載)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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