イタリア人ならではの｢ステイホームの工夫｣ 発見した｢コロナがくれた悪くないこと｣とは

こんなふうに厳しく感染防止対策をとっている場所が多く、外出規制はなくなったのにもかかわらず、未だに家に引きこもっている人がいると聞く一方で、夜の繁華街やビーチなどではコロナ以前とまったく変わらない人混みで驚かされる。

列車内の席は1席あけ、乗車口降車口も分けられていた（筆者撮影）

世界では感染がまだまだ収まらず、同じヨーロッパ内でもドイツやスペインでクラスターが発生したり、部分的な外出規制が敷かれたりしている。秋には第2波がやってくるという予想もある。そんな状況なのに、マスクもなし、距離も置かずビーチで日焼けを楽しむ人たち。2カ月閉じこもった生活でたまった鬱憤を晴らしているのか、それとも、第2波で再びロックダウンになった場合に備えて英気を養っているのだろうか？

イタリアの学校は例年でも6月の第1週で学年が終わり、3カ月の長い夏休みが始まる。今年はコロナウイルスの感染拡大で、2月の後半に幼稚園から大学まですべて閉鎖になり、再開しないまま学年が終了してしまった。私の娘は高校の最終学年だったので、ずっと休みが続いた後で、いきなり高校を卒業してしまったというわけだ。

そういえばイタリアでは一般的に卒業式や始業式、終業式がない。中間テストや期末テストのような「テスト週間」もない。その代わり頻繁にテストがあって、年間の点数の平均が6点以下（10点満点）は落第という厳しさだ。しかしコロナウイルス感染拡大で休校が続いた今年は全員落第なし、ということになったので、前期にサボり気味だった子どもはラッキーだ。

日本で少し前に「ゆとり世代」問題があったが、イタリアで何年か先の将来、彼らは「コロナ世代」と呼ばれて苦労する羽目にならないといいけれど。お受験も基本的にはないから、高校最終学年を半分しかやらないまま卒業し（オンライン授業はあったけど）、オンライン入試で大学に合格してしまった私の娘は、この夏は遊び放題である。

「助けるのは当たり前」という気質

ないものは卒業式やテストだけでなく、公立学校の予算もない。娘が小・中学生だった頃も、義務教育なのに教科書を自分で買わなければならなかったし、トイレットペーパーや石鹸を買うお金がないので各自持参しなければならないなんていうお粗末さだった。

でもないない尽くしのイタリアの学校なのに、障害や知的発達の遅れがある子どももほかの生徒たちと同じ教室で一緒に学ばせるための補助教員はちゃんといて、すばらしいなと思ったことがある。

娘が小学校の頃から学年にそういう生徒が誰かしらいたし、卒業したばかりの高校の同じクラスには、事故で首から下が不随になってしまった女子生徒がいて、毎日車椅子で通ってきていた。学校の旅行のときには、彼女の大学生のお兄さんが補助をするために一緒に旅行に来ていたそうだ。これは娘の学校だけの特殊ケースではなく、イタリアのどこの学校でも普通にあることだ。

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そんなふうに子どものときから自分とは少し違う人と触れ合うことに慣れているイタリアの人たちの間では、コロナウイルスの感染者や医療従事者を差別するということは起きていない。人種差別や職業差別がないとは言えないこの国で、病気に対する差別がないのは、小さい頃から弱者を助けることが当たり前になっているからだろうか？ 

日頃は黒人やアジア人差別があっても、急病のときはどこの病院でも救急へ行けば、移民も難民も無料で診療が受けられる。つらいときには嫌いな奴でも助けるよ、それがイタリア人という人たちで、イタリアという国なんだと思う。だから今も、ロックダウンの影響で経済が逼迫しているというのに、アフリカからの難民ボートの受け入れが始まっているのだ。

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