他方、LNG輸出基地が立地する地域では空気や水質の汚染が深刻化し、住民は負の影響に苦しむ。日本のエネルギー供給で重要な役割を果たすLNGビジネスの裏側で何が起きているのか──。現地取材も交えてリポートする。
テキサス州ブラゾリア郡フリーポートは、メキシコ湾に面する人口約1万人の産業都市だ。2026年5月、フリーポート在住の3人の住民が来日し、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)の関係者に、同行などが策定した「環境社会配慮ガイドライン」に基づく異議申立書を手渡した。
JBICはフリーポートでのLNG基地の建設に際して3メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)などとともに協調融資を実施。NEXIはプロジェクトに関する投資保険をエネルギー大手のJERA、大阪ガスに供与するとともに、3メガなどの民間金融機関に融資保険を提供している。
3人の住民は環境NGOの支援者とともに記者会見し、「LNG基地が私たちの健康を脅かしている」と怒りをあらわにした。
3人のうちの1人で、フリーポートLNG基地からわずか3マイル(約5キロメートル)の自宅で暮らすマニング・ローラーソン氏は、「これまでに家族や親戚のうち十数人ががんや呼吸器系の病気で亡くなった。私自身もぜんそくや気管支炎に苦しんでいる。LNG基地のこれ以上の拡張はやめてほしい」と訴えた。
有数の環境汚染地域に建設
フリーポートにはダウ・ケミカルを初めとして多くの化学工場が立地している。テキサス州保健福祉局の調査(調査対象期間は00~15年)によれば、肺がん、肝臓がん、鼻咽頭がんなど多くの種類のがんについて、フリーポートのがん発症率はテキサス州全体の発症率を大幅に上回っていた。
そうした全米でも有数の環境汚染地域に輸出を目的とした大規模なLNG基地が建設されたことで、メタンなどの温室効果ガスのみならず、窒素酸化物やベンゼンなどの有害化学物質の排出が上乗せされる形になった。
環境汚染が深刻な中でフリーポートLNG基地が稼働したのは19年。現在、全米で第3位のLNG輸出能力を持ち、ヨーロッパや日本を含むアジア諸国にLNGを輸出している。JERA(当時は中部電力)や大阪ガスはフリーポートLNGの事業会社に出資するとともに、それぞれ年間約232万トンのLNGを調達する契約を結んでいる。JERAは日本人社員を役員として派遣している。そして現在、フリーポートLNGでは4つめの生産設備の建設が計画されている。
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