ベンツ、BMWが日本で意外に苦戦し始めた事情 好調な輸入車だがドイツ車シェアは低下傾向

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これらのメーカーはいずれも新型SUVの投入で台数を稼いだのに加えて、ナビゲーションシステムや自動運転支援システムの充実で再びユーザーの注目を集め始めている。2~3年前まで、ドイツ車以外の多くの輸入車は純正装着のインフォテインメント・システムが明らかに時代遅れで、そもそもカーナビとしての性能が低かったほか、後付け品ゆえにほかの車載システムとの統合が図られていなかった。

日本市場は言語が異なることに加えて、地図のサプライヤーも異なることから、一定の販売台数が見込めるドイツのトップ4以外は最新のナビゲーションシステムの導入が遅れていたのだ。5番手につけるMINI(2018年の販売台数:2万5984台)やポルシェ(同7166台)といった、トップ4のグループ企業ブランドでも、対応が整ったのは2014~2016年と最近の話。近年の技術の進歩で、現地法人(インポーター)の特別な努力がなくても、多くの外部サプライヤーが日本仕様に対応できるようになってきた。

こうした背景をよそに、とりわけメルセデス・ベンツとBMWの2社は、ドイツ本社の意向を受けた販売競争に明け暮れてきた。表向きにはおくびにも出さないが、この2ブランドはグローバル販売台数でトップを奪うべく各国のインポーター単位で販売台数を競わせており、そこで好成績を出した管理職層が本社で出世する仕組みになっている。

毎年度末の数合わせのためインポーターはインセンティブ(報奨金)を増額してディーラー(販売店)の奮起を促す。結果、ディーラーは大幅な値引きや自社登録(新車に試乗車などの名目でナンバーを付け、新古車として市場に流す)をしてでも販売台数の上積みを図るのだ。

日本における輸入車の勢力図に変化

メルセデスやBMWの2018年12月販売実績がそれぞれ19.0%増、20.1%増だったのはそういった“努力”の成果だと思うが、それでも通年での前年実績には双方とも及ばなかった。ディーゼル問題が尾を引き不振から脱することができないアウディは、こうした競争に過度に踏み込まなかったようだが、日本法人の社長が比較的短期間で交代することを余儀なくされたところを見ると、ドイツ本社は現状を好ましいとはとらえていないはずだ。

VWグループ(VW+アウディ+ポルシェ+ベントレー)、BMWグループ(BMW+MINI)、ダイムラー(メルセデス+スマート)の3日本法人は、ディーラー網整備を含む販売、整備や技術サポートなどのアフターセールス、マーケティングや広報といった主要分野で今もほかを圧倒する規模を持つ。

だが、日本における輸入車の勢力図が、これまでのドイツ車一極集中から脱しつつあるのは明らかだ。今や自動車はパワートレインを中心とした古典的なハードウェア技術の集積から、グローバル・サプライヤーが司るソフトウェアの集合体に変化しつつあり、技術の進歩によって言語や法規制(時速100キロメートルを上限とする速度制限、左側通行など)の壁も低くなってきた。

高級品を求めるユーザーの嗜好も、隣家のクルマとは違うデザインやブランド、機能を求めてより一層多様化していることが、ドイツ車のシェア低下から垣間見えてくる。

真田 淳冬 コラムニスト

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さなだ きよふゆ / Kiyohuyu Sanada

メーカーはじめ自動車業界に長らく籍を置き、1950年代から現代に至る世界中のさまざまな乗用車をドライブした経験を持つ。歴史、経済、技術といった分野をまたぐ広い知見を買った東洋経済オンライン編集部が独自に著者として招いた。

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