衆参同日選?永田町に吹く解散への疑心暗鬼 日ロ会談、消費増税の決断次第で解散断行も

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一方、消費税率10%への引き上げは、会見などで「リーマンショックのようなことがない限り」との条件付きで今年10月に実施する方針を繰り返ししている。ただ、菅義偉官房長官は、2019年度予算の成立が見込まれる3月末をめどに消費増税を最終判断する可能性があるとの認識を示している。

年初の大発会で2万円の大台を割り込んだ日経平均株価は、米中貿易交渉などの国際的要因でさらに下落する事態も想定される。そうなれば、国内でも消費増税の凍結や延期を求める声が噴出することは避けられない。ただでさえ、増税に伴う軽減税率導入やポイント還元などをめぐる混乱が予想されるだけに、選挙をにらんで首相がまたも延期や凍結を決断する可能性も否定できない。そうなれば、「解散で信を問うのが自然」(自民幹部)ということにもなる。

もちろん、首相の専権事項といっても与党幹部の理解が得られなければ解散権の行使が難しいのも事実。自民党にとって国政選挙での連携が必要な公明党は、山口那津男代表が6日のNHK番組で「解散は首相が決める専権事項だが、できるだけ避けた方がいい。同日選挙は複雑になり、エネルギーも分散する。決して得ではない」と改めて反対する姿勢を明確にした。首相経験者も「首相が、日ロや消費税という奥の手を使って解散しても、公明党の離反があれば衆参ダブル敗北になりかねない」と指摘する。

日ロ、ダボス会議次第で豹変も

首相は一連の新年行事の締めくくりとなった7日夕の帝国ホテルでの互礼会で、年末年始のあいさつで必ず言及している今年の干支のイノシシについて、「猪突猛進の言葉から、脇目も振らずに突進するイメージが強いが、実はその動きは自由自在、障害物があれば左右によけたり、ひらりとターンしたりできる、身のこなしが極めてしなやかな動物だ」といたずらっぽい笑顔で解説した。

その上で解散について「頭の片隅にもないといっている。いろいろな声があるが、今はまったくどこにもない」と述べ、目の前の公明党・山口氏に「なんとか安心していただけたのでは」と呼び掛けて満場の笑いを誘った。ただ、この発言とは裏腹に、首相実弟の岸信夫・元外務副大臣は大手紙の新年インタビューの中で、「(同日選は)あり得る選択肢というか、可能性が大きいかな、とは思う」「(兄の)首相と話したことはないが、たぶん、選挙は嫌いじゃないんだと思う」などとあえて“身内の本音”も吐露している。通常国会が28日召集予定と例年より遅いこともあり、各党衆院議員も地元での新年会まわりに精を出すなど、選挙ムードは沈静化する兆しが見えない。

首相は9~11日の日程でオランダと英国を歴訪し、21日には訪ロしてプーチン大統領との首脳会談。続く22日からスイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席し、講演して25日に帰国する予定だ。まさに年明けから「安倍外交全開」となる。ただ、「この日ロ首脳会談で平和条約締結への大きな進展があれば、同日選は一段と現実味を帯びる」(自民若手)ことになるし、ダボス会議で各国代表らから世界経済失速への懸念が噴き出せば、国内での消費増税延期論も勢いづく。それを踏まえ、帰国後の首相が衆参同日選に向けて「ひらりとターン」する可能性を指摘する向きは少なくない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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