巻頭対談(WEB限定版)
日本のリーダーが世界で戦うために必要なこと 岡田武史(サッカー元日本代表監督)×近藤聡(デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー)

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近藤 リーダー論をもう少しお聞かせ下さい。私も仕事柄、リーダーのことを研究してきました。自分自身が社長を拝命したときに、そもそもリーダーってなんだろう、代表取締役って何だろうって考えたんです。経営コンサルタントをやっていて、いまさらながらというのはあるんですけれど(笑)。

とにかくそこでリーダーについて改めていろいろな本を読んだなかで、ある本では、リーダーは代表者だと。何か事が起こったときに結果責任を負う。そういう意味では、腹をくくっていなきゃいけないと。まさに大山大将の姿ですね。ふたつ目が、リーダーとは設計をする人だと。これは組織とか、会社自体が効率的に回るようにするために、会社というシステムそのものをどう設計していくのかを考え、実行していく役割があると。コンサルタントをやっていますと、我々はだいたい設計者的役割で動いたり、サポートで入ることが多いので、それもなるほどよくわかる話だなと思いました。

じゃあ、どうやってそのリーダーになるのか、リーダーをつくっていくのかを考えて出会ったのが『リーダーシップの旅』(野田智義/金井壽宏、光文社新書)という本でした。リーダーとしての最初のステップはリード・ザ・セルフできること。自分自身をリードするところからまずは旅が始まる。自らの目的地を定め、歩いていく。ここで魅力的な目的地を設定し、その魅力を、会社やチームなどを主語にするのではなく、一人称で語り、うまく伝えられないとリード・ザ・ピープルはできない。リーダーとは上下関係ではなく、ピープルがついてくるか否かなのです。そしてこれができる人が、やがてはリード・ザ・ソサエティできるようになる。この本に書かれていた指摘は大変腹落ちしました。岡田さんの考えるリーダー像とはどのようなものでしょうか。

岡田 ある人の言葉ですが、リーダーとは「志の高い山に必死に登る姿を見せる人」だと。聖人君子のように、頭がよく切れてなんでも頼もしくこなせる人に付いていこうと思うわけではなくて、必死になって、志の高い山に登っている姿を見て、人は「よし、この人に付いていこう」と付いてくると。そして、その山が、自分のためではだめで、本当に志の高いものでなくては人は付いてこない。坂本龍馬は、この国をなんとかしたいという志とそこへ向かい続ける姿にみんなが付いてきただけだと思うんです。初めから、「リーダーシップはこうで、しゃべり方はこうで」とか、そんなことは何も考えていなかったはずだと。その通りだと思うんですよね。

近藤 岡田さんが登ってらっしゃるのは、どんな山なんですか。

岡田 選手やスタッフ、その家族を笑顔にさせること。そのためにならがんばれますが、名誉や金銭だけでリーダーは続けられないですね。

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