巻頭対談(WEB限定版)
日本のリーダーが世界で戦うために必要なこと 岡田武史(サッカー元日本代表監督)×近藤聡(デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー)

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世界と伍していくためには?

近藤 次に、個人の力についてうかがいたいと思います。日本のビジネスパーソンは欧米人に対していまだコンプレックスを持っているように感じます。本当はNoと思っていることでも、英語でまくしたてられると、ついYesと言ってしまう。日本が世界と戦うためには、こうした個人のメンタリティを変える必要があると思いますが、どう克服すればいいのでしょうか。

岡田 確かに、フランスW杯(1998年)のときは、選手にもそういったメンタリティがありました。大会の雰囲気に飲み込まれ、下手をすると対戦相手のスター選手にサインをもらいに行くんじゃないかと(笑)。しかし、その後の世代は大きく変わってきています。U-15やU-18ですでに世界大会を経験しているからです。そこで対戦した選手がW杯で活躍するのを見ると「あいつがあそこにいるなら、俺だって」と思うようになります。

近藤 フランスW杯のあと、日本のサッカー界を牽引してきたのは、そうしたワールドユースの経験者だったのですね。

岡田 小野伸二、遠藤保仁、稲本潤一たちはワールドユースで準優勝しています。中田英寿もアトランタ五輪でナイジェリアと戦い、そのナイジェリアが優勝したことを受け、「俺たちにもできる」と確信しました。世界を知る選手たちが、後の日本代表の中核となっていったのです。

近藤 マネジメントの立場から見ると、そうした「世界を知る」選手を、「世界を知らない」指導者が束ねるのは大変だと思うのですが。

岡田 発足当時のJリーグも同じでした。選手はプロだが、監督やGMは親会社からの出向者だったのです。時間の経過とともに、監督がプロになり、やがてGMもプロ化してきました。こうして全員が順々にプロになって、はじめて本物のプロサッカーチームと呼べるようになりました。若者たちの変化から全体が変化していったのです。

近藤 日本企業のグローバル化にもヒントとなる話です。

岡田 まだコーチをしていたときに旧ユーゴスラビア代表監督のミリャン・ミリャニッチに「なぜ日本は代表チームだけ強くしようとするのか」と言われました。世界の強豪国の選手たちはU-15やU-18で世界を知り、結果を出し、代表に呼ばれて強くなっている。「代表だけを強くするのは近道ではない。大事なのは若者と指導者の育成だ」と。そういう意味では、ユースから世界で戦い、欧州のクラブで活躍する最近の選手たちが、やがて日本サッカー界の指導者になってくれれば、日本はもっと強くなると思います。

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