巻頭対談(WEB限定版)
日本のリーダーが世界で戦うために必要なこと 岡田武史(サッカー元日本代表監督)×近藤聡(デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー)

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近藤 相当なプレッシャーだったのでしょうね。

岡田 ジョホールバルの試合の前、妻に「負けたらしばらく日本に住めないと思う」と連絡したほどです。しかし、追い詰められると人間は、遺伝子にある種のスイッチが入るものなんですね。前日になると、「明日すべて出し切る。それで駄目ならしょうがないじゃないか」と吹っ切れました。「こんな大きな責任をすべて自分で背負うなんて無理だ。俺は全力を出す。それでも負けたら、俺を選んだ会長のせいだ」と(笑)。こう思ったときからすっきりした気持ちになり、怖いものがなくなりました。あの瞬間から変わりましたね。

「遺伝子にスイッチが入る」というのは、科学者の村上和雄さんの言葉なんですが、人間、絶体絶命の窮地に立たされると遺伝子にスイッチというものが入るものじゃないか。けれど今の時代はその前に助けることが多いように思います。みんな、どん底に落ちる前に、助けてもらえたり、逃げ出せる。僕も逃げ出したかったけど逃げ出せなかったんだもの(笑)。高い成果を上げる経営者のなかには、このように一度どん底に落ちて、そこでスイッチが入った方が多くいるのではないでしょうか。

近藤 遺伝子にスイッチが入る修羅場の経験、それがどのようなものであれ、今の時代で自らを変えていこうとするすべてのひとが必要としているのかもしれません。

(photo: Koichi Imai)

近藤 聡(こんどう・あきら)
自動車業界を中心に、企業戦略、オペレーション改革、海外展開戦略の策定・実行支援など、クロスボーダーを含むプロジェクトを数多く手掛けている。2010年代表取締役社長に就任。

 

 

 

岡田 武史(おかだ・たけし)
大阪府立天王寺高等学校、早稲田大学でサッカー部に所属。同大学卒業後、古河電気工業に入社しサッカー日本代表に選出。引退後はクラブサッカーチームコーチを務め、1997年に日本代表監督となり史上初のW杯本戦出場を実現。その後、Jリーグでのチーム監督を経て、2007年から再び日本代表監督を務め、10年のW杯南アフリカ大会でチームをベスト16に導く。11年12月から中国サッカー・スーパーリーグ、杭州緑城の監督に就任。

 

 

 

 

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