巻頭対談(WEB限定版)
日本のリーダーが世界で戦うために必要なこと 岡田武史(サッカー元日本代表監督)×近藤聡(デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー)

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近藤 企業は「利益のため」「成長のため」と、それらを短期的に追い求める傾向にありますが、「何のためにやるのか」を問い直すことは、現状を変えていくためには確かに重要ですね。

岡田 私は今、中国のチームで監督をやっていますが、国と国同士はいろいろと難しい関係だけれども、チームとしてみんながひとつになって戦っている姿を見せることで、子どもに何か伝えたい、そういうところも実はあるんです。おやじの言い訳なのかもしれないですけどね(笑)。企業活動も結局は、次の時代に何を残せるかということがすべての基本にあるのではないでしょうか。ここが理解できていれば、何かを変えることを拒む理由はないはずです。

近藤 ただ現実的にはなかなか難しいところもあるのではないかな、と思うのですが、実際、リーダーとして変えていく、ということを考えたときにこれが大切だ、と思われるものはありますか?

岡田 やはり、大局観が求められるものだと思いますね。サッカー監督として一番大事なのも、目の前の状況から一歩引いてピッチ全体を見渡せる大局観なんです。試合を見ているとき、ピッチの中で、「あっ、今あの右サイドがやられている」と、細かなポイントを熱心に見たり分析したりするんです。でも、すっと引いて全体の流れが今どうなっているかを見ることが監督の仕事としては一番大切だと思っています。

今の指導者の人は、やっぱり皆、かなり勉強しているなと思います。戦術論などは本当によく知っている。でも、それをいつどこでどう使うのかを判断できなければやはり意味がないと思うんですよね。企業経営においても、世の中の流れや会社全体の今を俯瞰して捉えることは、将来の方向性を模索する上で、不可欠なのではないでしょうか。

リーダーとして、高い山に登っているか?

近藤 おっしゃるとおり、リーダーに大局観は不可欠です。しかし日本企業の社長の平均就任年齢は約59歳、任期は5~6年というケースが多いようで、これでは大局的なビジョンを描けといっても難しい。大幅に若返らせ、任期を延ばさないと、大局観を持ったリーダーは現れないのではと感じています。

岡田 同感です。たとえば私が「このチームを変えてくれ」と依頼されても、2~3年の契約期間では無理なんです。オーナーが本気でチームを変える決意をし、長期的なビジョンを持って取り組まないと変わりません。

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