巻頭対談(WEB限定版)
日本のリーダーが世界で戦うために必要なこと 岡田武史(サッカー元日本代表監督)×近藤聡(デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー)

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加えて最近思うのは、もう私なんかの価値観で物事を大きく変えるのは難しいということです。社会の変化を肌で感じているのは若い人たちです。たとえば若者のクルマ離れは環境には良いことだし、出世を望まない層の増加も先ほどの「利益のその先」の話とつじつまが合っている。こういう彼らの価値観が、物事を変えていくのではないでしょうか。私たち自身が、たとえば、若い人たちをひ弱に思ったり頼りなく感じて仕事ややるべきことを抱えてしまうのではなく、若い人材にチャンスを与え、思い切って多くのことを任せるべきだと思います。

近藤 リーダーが掲げる理念について先日、新聞である欧米の医薬品メーカーについての記事を読んだんですが、創業家がいまだに残っているらしいんです。ただ、じゃあ、創業家がビジネスに口を出すかというと、出さない。出さないけれど、創業家が守りたかった理念に関してはCSRの観点からウオッチをする。今の企業をみると、創業者がいたときはある種社会のためにというような、理念があって、その下に事業を行っていたのがだんだんビジネスの方ばかりに流れていって、理念が本質的に引き継がれず、壁に張られているだけになってしまっているようなことが結構起こりがちに思います。

岡田 生きた理念になっていないんですね。

近藤 ええ。ですから、今、元気のいい会社を見ていると、楽天もそうですし、あるいはファーストリテイリングなど、創業者の方が理念に基づいて事業を行っている会社はうまくいっているように思います。

岡田 なるほど。ただ、創業者の方の影響力が強すぎるのも、それはそれで問題ですよね。影響力の強いひとりの創業者に頼り、創業者が牽引していくというのは、これからの時代の経営の在り方としては違うのではないかなと感じています。創業者がつくった理念をしっかり語れる人が引き継いで、前面でのビジネスはほかの社員や若い世代の人たちに任せるという形がうまく機能する形なのではないでしょうか。

イメージとしては、『坂の上の雲』の大山大将のような方ですね。勝っているときはずっと寝ていて、負け出したら、そろそろ出番かと出てくる。そういったポジションにしっかりした人がいて、前面の企業経営やデイリーワークなどはその人に少々問題があっても目をつぶって任せる、ということが理想なんでしょうね。

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