障害児向け「エリート校」が生まれる根本理由 都が鳴り物入りで進める特別支援教育の正体

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教育機関がすべきことは、障害のある学生や若者を隔離して既存の型にはめるよう訓練を施すことではないはずだ(写真:Rich Legg/iStock)
少子化で子どもの数が減る一方で、障害のある生徒たちが通う特別支援学校の数は増え続けている。特別支援学校が力を入れているのは民間企業への「就労支援」で、東京都では企業就労率100%を目標に、職能開発科と就業技術科が設置され、特別なカリキュラムが組まれている。
法定雇用率が引き上げられる中、企業は法定雇用率をクリアしようと「障害者向け」の仕事を切り出し、それに合わせて特別支援学校も就労対策をしているという構図だが、就職が教育のゴールとなってしまってよいのだろうか。また、それは障害者だけの問題なのだろうか。『新版 障害者の経済学』を上梓した慶應義塾大学商学部教授の中島隆信氏に解説してもらう。

子どもの数が減る一方で、増え続ける特別支援学校

日本の教育界で特異な現象が起きているのをご存じだろうか。障害のある生徒たちが特別な支援を得て受ける教育のことを「特別支援教育」と呼ぶが、その"市場"が急速に拡大しているのである。

1997年から2017年までの20年間で、特別支援学校の数は1.16倍、在学者数は1.64倍、そして教員数は1.55倍になった。少子化の影響から、普通校ではそれぞれの数値が0.86、0.78、0.94であったにもかかわらずである。

日本における障害児の公教育の歴史は比較的新しく、スタートしたのは今から40年ほど前の1979年のことである。国家がすべての国民に平等に教育を受ける権利を保障するのが義務教育の趣旨なのだが、それ以前は、障害児はそこから除外されていたのである。

もちろん、いくつか障害児向けの公立学校や篤志家の設立した学園は存在していたが、その数は限られていたため、障害児を抱える親にとって養護学校(現在の特別支援学校)の設置は切実な願いだった。

ただ、障害児教育が何を目指すべきかを十分に検討しないまま学校だけが次々と作られたことによる弊害も生まれた。障害児と一言でいってもその特徴は千差万別である。普通校でやっていることをそのまま当てはめてもうまくいかない。

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