コンサルティングファームで進む労働環境改善
さて、東京、ロンドンに限らず、時折、死者が出るまでに過酷な労働を強いられる一部のエリートたちであるが、このままでは投資銀行はますます優秀な人材を失い、人材の質という意味で二流産業化していくかもしれない。
たとえば優秀な人材の獲得で投資銀行と競い合うコンサルに関しては、最近、労働環境はずいぶん改善されている。そもそも昔からプロジェクトの合間は2週間とか3週間とか旅行に行くのは普通だったし、仕事内容もバラエティに富んでいて面白く、またフレックス的なところがあって、朝は実は10時とか、下手したら昼頃にくる人も多い。
加えてコンサルティングファームは優秀な人材をつなぎ留めるためにさまざまな工夫をしており、週に3日勤務のワーキングマザーコンサルタントもいれば、給料を7%くらい返上する代わりに1カ月有給を増やすとか、「社会問題にインパクトを与えたい!」という血気あふれる若者の需要に応えてソーシャルアントレプレナー(社会起業家)に対するコンサルを提供したりしている。
また、数年働いたら半年ほどサバティカルとかいってNPOで働く機会を与えたり、“エクスターンシップ”といって顧客企業に派遣して違う経験を積ませたりと、社員に生きがいを感じさせる試みを強化しており、ここ数年で一流コンサルティングファームのヨーロッパオフィスに関しては、驚くほどの進化を遂げた。
実際に某トップティアの米系コンサルファームなどでも、東京オフィスは辞めたくて仕方なかったが、ロンドンオフィスとかに移ってたいへん幸せな生活を送り、満足している友人もたくさんいる。
コンサルティングファームの労働環境が年々大幅に改善されているのに、ただでも業界の転換期を迎えている金融業界を背負って立つ若者が過酷な労働環境の犠牲になり、時に命まで落とす事態になっているのは極めて嘆かわしい。優秀な人材が提案の質を競って顧客に仕え、ライフ・ワークバランスを失わずに長らく働いてもらえるよう、投資銀行各社の経営陣の皆様のリーダーシップに期待したいところである。
最後に:死ぬほど頑張ってはいけない
末筆ながら、今、激務に追い詰められながら連日機械的に会社に通っておられる全国1000万人の皆様……つまりそう、今、本コラムをお読みの、あなた!!
人生は一度しかなく、あなたはこれをするために生まれてきたわけでもなく、その憎たらしい意地の悪い上司に仕えるために、ご両親があなたを生んだわけではない。知らず知らずのうちに奴隷化している自分をそろそろ解放してあげてはいかがか。
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