シンドラー日本撤退、事業継承者の重い課題 オーチスは事故のイメージを払拭できるか

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日本オーチスの売上高は599億円、営業利益は155億円(2015年)と高収益。国内シェアは三菱電機、日立製作所、東芝に続く4位グループで、フジテックなどと同規模とみられる。

買収額や今後の売上規模の目標は明らかにしていないが、日本オーチスのステファン・ド・モントリボール社長は「自助努力では、この規模を獲得するのに20年はかかっていただろう。それを一夜にして手にすることができた。成長を加速させる良い機会だ」と意気込む。

オーチスが重要視するのは単なる保守メンテではなく、更新工事(大規模なリニューアル)といわれるものだ。部品交換だけなく、エレベーターの扉を変えたり、巻き上げ機や制御盤などの機器も省エネ性や安全性に優れたものに交換したりする工事だ。

保守メンテや更新工事を行う台数は、年々増加している。エレベーターの保守台数は、2005年に59万4365台だったものが2015年には、72万4854台に拡大(日本エレベーター協会)。一方、新設は2005年に3万4813台だったものが2015年には2万4343台に減少している。縮小する新設工事をライバルたちと奪い合うよりも、更新工事で上乗せする方が効率的なのだ。

シンドラーの事故多発イメージを払拭できるか

事故のあったシンドラーを引き受けることについて、ド・モントリボール社長は、「シンドラーブランドを買収するわけではない」と言い切る。買収したシンドラーのサービス部門は、オーチス・エレベータサービスに会社名を変更し、イメージ払拭を図っていく。「新しい会社にすることで、過去ではなく将来に向けて注力する」(ド・モントリボール社長)。

ド・モントリボール社長は「われわれはシンドラーのアセットを買収するんだ。ブランドを買収するわけではない」と強調した

当面はシンドラーの保守メンテが上乗せされることで、業績拡大が見込まれる。だが、更新工事は日本メーカーも力を入れているところだ。日本の場合、製品を納入したメーカーが自社で保守メンテを引き受けることが多いため、設置台数が多い三菱電機や日立製作所、東芝が圧倒的に有利である。

ド・モントリボール社長は「世界で7社と戦っているが、日本はその4社があり、特殊な市場」と厳しい競争環境を認識しつつ、「オーチスは昇降機でグローバルリーダーだ。日本のニーズに技術力や専門性で貢献したい」と語った。

シンドラー製のエレベーターで起きた死亡事故は、いまだに強烈な印象を残している。決して良好とは言いがたい過去のイメージから脱却し、成長につなげることができるか。オーチスにとっても長期戦となりそうだ。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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