日本人は「1億総中流」崩壊の深刻さを知らない

コロナで自営業者や個人事業主が苦しんでいる

労働組合の幹部は、これを「コロナ切り」と呼んでいたという。非正規で働くシングルマザーの多くが、収入が減った上に臨時休校で子どもの世話もしなければならず、給食がないので食費もかさみ、追い詰められた。多くの外国人労働者も雇い止めを受け、帰国する交通費もなく、職につくあてもなく、途方に暮れた。

しかし同様に多かったのが、自営業者や個人事業主に関する報道である。飲食店は大幅に売り上げが減り、テイクアウト販売を始めたりするもののまったく追いつかず、家賃や光熱費の負担に苦しんでいた。

商店街からは人通りが消え、衣料品店や雑貨店などは売り上げが激減し、次々に閉店を余儀なくされた。町工場は中国や韓国から部品が入ってこなくなり、受注も激減して、廃業へと追い込まれていった。ゼネコンなどから個人または数人で作業を請け負う建設業者は、作業現場で感染の危険にさらされ、あるいは工事の停止によって収入を断たれた。

新型コロナで「階級性」があらわに

このように新型コロナ禍の直撃を受けたのは、まず非正規労働者、そして自営業者や個人事業主だった。ここに新型コロナ感染症の「階級性」があらわれている。その流行は、日本がれっきとした階級社会であるという事実をあらわにしたのである。

もっとも非正規労働者が脆弱な立場にあることは、すでに広く知られていた。しかし今回、新たにあらわになったのは、自営業者や個人事業主など、階級論の用語を用いれば旧中間階級に属する人々の脆弱性である。

一般に現代社会には、資本家階級と労働者階級という2大階級のほかに、2つの中間階級がある。それが、新中間階級と旧中間階級である。新中間階級とは企業などで働くホワイトカラーや専門職のことである。

一方の経営者、他方の現場で働く労働者の、文字通り中間に位置する階級で、資本主義の発展によって新しく生まれてきた階級である。これに対して旧中間階級は、ひとりで経営者、そして現場で働く労働者の両方を兼ねるような働き方をしている人々で、前近代社会から存在している古い階級である。

新中間階級と旧中間階級は、近代日本における2つの「中流」である。一方は、学歴や技術をもち、組織のなかに地位を築く「中流」。他方は、事業に必要な有形無形の資産をもち、独立自営で働く「中流」である。この2つの中流は、普通の人々に手の届く「ほどほど」の目標であり、だからこそ「中流」の多い社会は望ましい社会だとみなされてきた。

ところが新型コロナ禍は、この2つの「中流」に大きな違いがあることを浮き彫りにした。業種によって違いはあろうが、新中間階級は在宅勤務で大方の仕事をこなすこともできたうえ、さしあたって雇用と給料は保証されていた。ところが他方は廃業の危機に、ひいては階級としての存続の危機に追い込まれたのである。

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