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2026年10月、宮城県大崎市の国道4号で、鶏を運搬していたトラックの積み荷が崩れ、多数の鶏が道路に放り出された。報道映像に映っていたのは、食肉用のブロイラーたちだった。
車が行き交う道路に突然投げ出されたのに、鶏たちは一斉に走り去るわけではない。多くはその場にうずくまり、ゆっくり動く姿も見られた。鶏というと白い羽毛を想像するが、映像に映った鶏の羽毛は汚れているように見えた。
「鶏たちは、なぜ逃げないのか」――。映像を見て、そう感じた人もいるだろう。SNSでも、鶏が逃げないことを不思議がる声が見られた。事故の衝撃や周囲の騒音などの影響も考えられるが、ブロイラーそのものの特徴にも目を向けたい。食肉用に改良されたブロイラーは短期間で大きく成長し、体が重くて脚への負担も大きく、動き回りにくくなりやすい。
私たちがスーパーで目にするのは、すでに切り分けられた鶏肉である。食卓に上る前の鶏が、どのような姿で、どのように暮らしているのかを見る機会は少ない。今回の事故は、その見えにくい現実を一瞬だけ私たちの前に示した。これを機に、日本の一般的なブロイラー生産について考えてみたい。
ひよこが50日で3キロに 体重が60倍になる“スピード成長”
ブロイラーは、肉を効率よく生産するために長年改良されてきた鶏である。ふ化直後には40~50グラム程度だった体重が、50日ほどで3キログラム前後に達することもある。50グラムから3キロなら、実に60倍だ。自然に成長するのを長く待つのではなく、成鳥になる前に出荷される。
こうした生産技術のおかげで、鶏肉は手頃な価格で大量に供給されるようになった。消費者にとって大きな恩恵である。ただし、急速な成長は鶏の体に負担をかける。胸肉などの筋肉が発達し、体重が増える一方で、脚や関節が十分に支えきれず、歩行に支障を来す鶏が生じることが知られている。


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