伏日に犬肉を食べる習慣には、中国から伝わった陰陽五行思想も関係している。八田氏は、暑さによって弱まると考えられた要素を補うため、犬肉やネギ、辛味を組み合わせた料理が好まれたと説明する。
もっとも、昔から誰もが犬肉を食べていたわけではない。朝鮮時代にも上流階級を中心に犬肉を避ける風潮があり、八田氏によれば、犬肉の代わりに牛肉を使ったことが、ユッケジャン(肉狗醬:牛肉・犬・スープの意)の名称の由来になったとする説もあるという。
約20年前、筆者が韓国で経験した犬食
筆者が韓国に留学していた00年代前半、ソウル市内で犬肉料理のポシンタン専門店を見かけることは、決して珍しくなかった。
韓国人の友人のなかには「犬をペットとして飼っているから絶対に食べない」という人がいる一方、「子どもの頃から食べてきた大好物」という人もいた。
ある日、友人に勧められて人気だという専門店を訪れたことがある。「一度は食べてみたら」と促され、筆者も注文してみた。
しかし、一口食べたところで箸が止まった。味が口に合わず、そのまま食べ続けることができなかったのだ。今思えば、犬を想像してしまう自分がいたのかもしれない。
残った料理は友人が持ち帰った。
友人が「なぜ食べられないのか」と不思議そうにしていたのをよく覚えている。育った環境が違えば、同じ料理に対する受け止め方もこれほど異なるのだと実感した。


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