昨年は駅弁愛が高じて「ひとりで楽しむ鉄道旅 駅弁めぐり篇」(玄光社)という本を出した。その本で書いた私なりの「駅弁の定義」は以下だ。
・掛け紙・スリーブがあるもの
・お弁当に名前があるもの
・長年、その地で売られているもの
実は駅弁には、きっちりと決まった定義がない。昔からある駅弁もあれば、新しい業者が作った弁当が参入してくることもある。駅で売っていれば駅弁と呼んでいいのかなど、駅弁について日々ひとりで考え続けていたところ、JR西日本に駅弁を研究している稀有な人がいるとの噂を聞いた。その人は京都鉄道博物館にいるとのことだったので、さっそく会いに京都へ向かった。
「駅弁を文化として世の中に広めたい」
奥山喜文さんは、「JR西日本 鉄道文化推進室」の担当課長。2022年12月から約2年間、広島にある広島駅弁当株式会社に出向していた。そこで文化庁の2024年度「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業に応募したところ、採択される。
「駅弁が文化としてもっと広く世に認められないかと考えていました。そこで駅弁の歴史と海外比較、そして郷土料理との関連性を中心に調べました。1年目は、駅弁の歴史や広島県内をモデルに郷土食と駅弁の関係性について調査し、日本の文化である駅弁と海外の食文化との比較のため海外にも足を運びました。翌年も文化庁に採択されまして、2年目は広島県外にも目を向けて対象を全国6道県に広げ、駅弁のわざについても考察しました」
駅弁は1885年7月16日、宇都宮が発祥と言われている(諸説あり)。日本最初の鉄道が開業したのが1872年10月だから、その十数年後に駅弁も誕生したことになる。駅や乗り換えの間に買える駅弁が、全国で売られるようになり、140年。鉄道の歴史は駅弁の歴史でもある。
「まずは『地域性』について。広島の郷土料理と駅弁の関係は、駅弁側からではなく、郷土料理側からも見てみました。郷土料理は、ハレの日などに作られるものが多く、その機会は生活様式の変化と共に、だんだん少なくなってきています。以前は作り手と食べ手が一緒だったものが、分離してきてしまっている。さらに核家族化などにより、伝承されにくくもなってきているのです」

