こうした「料理に求めるものの違い」を読み解くうえで手掛かりにしたいのが、「食事習慣」と「料理への習熟度」である。
前者はつまり、どんなシチュエーションで食べることを想定しているかだ。わかりやすい例を出すと、お酒に合う“つまみ系の食事”をメインにしている料理家は、提案するレシピも、酒に負けないようなハッキリとした味が中心になりやすい。
しかし、酒をたしなまず、ご飯のおかずとして一皿を選ぶ人は、「インパクトが強すぎる」「味が濃い」という印象を抱いてもおかしくない。完成品だけでなく、それが提供される場もふくめて、“レシピ”と言える。
「0から1」と「1から10」で欲しいレシピは違う
もう1つのポイントは、料理への習熟度だ。自炊の経験がない状態から、まず1品作れるようになる「0から1」があり、その後も中級者を経て、できることを増やしていく「1から10」へ。その途中で欲しい情報も変わっていく。
これまで自炊をしていなかった人にとっては、「一度でも自分で料理を作れた」という経験が意味を持つ。実際に作れれば、日常の食事に“自炊”という選択肢が加わるからだ。一方で、基本的な調理ができるようになると、より細やかな味や仕上がりを求めることもある。
つまり、「ひとまず作れるようになりたいとき」と、「作れる料理をさらに良くしたいとき」では、求める情報が違う。経験を重ねた人がレシピを見る際には、「取っつきやすさ」よりも、「どこを深められるか」に関心が向く場合もあるだろう。
そうした視点から、SNSでバズりがちのレシピを見ていると、「作り始めるまでの負担を小さくし、自炊のハードルを下げる提案」が支持されやすいように思える。出来あがった料理の評価に加えて、「そもそも作る気持ちになれるか」という点が重要なのだ。
自炊の入り口で求められるのは、本格的な一皿よりも、まず「これなら自分にもできそうだ」「試してみたい」と思える提案ではないか。成果物としての料理だけでなく、その前段階にあるモチベーションづくりまで伴走する。そうした姿勢の料理家が、SNS時代では重宝されやすい。


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