『「弱者」の経済学』(中島隆信著、東洋経済新報社)の著者は2006年の著作『これも経済学だ!』(ちくま新書)において、伝統分野や宗教活動、障害者などの「弱者」に焦点を当てている。目的は、それらの奥に潜む「合理性」の仕組みを明らかにすることだった。
「世の中に弱者はいない」
ところが、ある書評番組で同書が取り上げられた際、出演者の一人から「『世の中に弱者はいない』などとこの人は本気で書いているのか?」と言われたのだそうだ。
「この著者はあえてセンセーショナルなことを言っている」との発言もあったというので、どうやらその方はこれを扇動的な表現だと解釈したようである。それだけで “ズレている”ことがわかる。
もしも真剣に読んでいたのであれば、そういう意図で書かれたものではないことはわかるはずだからだ。この本を私が読んだのはずいぶん前なので、もう詳細は記憶にない。しかしそれでも、“そういう本”ではなかったことは覚えている。
いずれにしても、そういう「自分なりの正義感を振りかざす人」はなにかと厄介だ。
そこで問題となるのは、弱者の定義が曖昧であるという点だ。どのような人を思い浮かべるかは人それぞれだろう。自分が生きている時代によっても、また、置かれている立場によっても弱者の定義は異なるのである。そして、本来は弱者ではない人に対しても、可哀想な人だから助けてあげるべきだという考え方が生まれるのである。(『「弱者」の経済学』「はじめに」より)



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