先述したように、行政から“もっともかわいそうな”弱者とみなされている障害者については、企業に一定割合の雇用義務が課せられている。その割合は年々引き上げられているものの、果たして本当に当事者のためになっているのかどうか検討の余地があると著者は指摘している。
状況によって変わる「立場的弱者」
企業と社員の関係性について考えてみよう。業績の悪くなった企業が社員をリストラしたとすれば、企業の経営は改善するかもしれない。しかしその一方で解雇された社員は失業し、収入の道を絶たれる。
銀行と企業間の資金の貸借では、金融危機の際に銀行が資金回収のため企業への貸し出しを引き揚げる“貸し剥がし”が問題化したことがある。銀行からの融資が受けられなくなれば、企業の経営は立ちゆかなくなる可能性がある。それは、家主と賃借人の関係にしても同じ。たとえばアパートをマンションに建て替えるために賃貸契約を打ち切れば、賃借人は住む場所を失ってしまう。
親事業者と下請事業者の場合であれば、利益を出したい親事業者が下請に対して購入する部品等の価格を下げるように要求することもある。値下げに応じないと取引を停止すると脅されれば、要求を飲まざるを得なくなるに違いない。
金融市場や不動産市場においても同じだ。常に貸し手が優位に立っているわけではなく、不況時には優良な貸出先が見つからず、経営が立ちゆかなくなることもあるからだ。日本でも、オイルショック後の不動産不況やバブル崩壊後の金融機関の統廃合などがそれにあたる。


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