人間独特の弱者としては、高齢者もその範疇に入る。多くの野生動物は、自力でエサをとれなくなれば生存は不可能だ。また、産卵の数日後に死亡するサケのように、遺伝子の働きによって“老い”が許されない生物もいる。セミも同じで、1~6年ほど幼虫として地中で過ごしたのち、産卵のために成虫となるが、その期間は長くても1カ月ほどに過ぎない。
この仮説に従うなら、“子育ての助っ人”としての役割を終えた時点で人生を全うしたことになる。しかし実際には、福祉や医療サービスの恩恵を受けながら、人間はそのあとも病気や怪我で亡くなるまで生き続けられる。当たり前のようにも思えるが、実際のところこれは人間独特の生物的弱者と考えることができる。
病気により機能不全が生じる「医学的弱者」
この定義があてはまるのは、病気によって身体に機能不全が生じている人だ。ただし、加齢による慢性期の疾患を抱える人は、生物的弱者に該当する。
遺伝子の変異によって筋肉が壊れていく筋ジストロフィーの患者は、典型的な医学的弱者であると著者は述べている。筋ジストロフィーは幼児期に発症し、次第に筋力が衰え、最終的にはほぼ寝たきりの状態になってしまう。筋肉破壊が心臓まで到達するデュシェンヌ型の場合は、若くして死に至ることも多いそうだ。成長期に筋肉が劣化していくという、本来とは逆の道をたどるわけである。そのため、心理的なダメージも大きい疾患といえるだろう。


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