「こんなんじゃダメだ」
東日本大震災の発生から10日ほど経った2011年3月22日。国土交通省東北地方整備局の局長(当時)、徳山日出男は、企画部長の川嶋直樹が差し出した文面を一読して言った。
徳山は、東日本大震災で沿岸部への道路を切り開いた「くしの歯作戦」を指揮し、のちに国交省の事務方トップである事務次官に上り詰めた。「伝説の次官」とも呼ばれる人物だ。
前日の21日、徳山は川嶋に命じ、どんな依頼でも引き受けるから何でも要望してほしい、という趣旨の文書を被災自治体に送らせていた。徳山の名前で送ったが、遠慮してか、依頼はほとんど来なかった。
「どんなお手紙を書いたんだよ?」
不思議に思って尋ねた徳山に、川嶋が「普通にこう書きましたよ」と見せたのが、その文面だった。
徳山は自ら文面を手書きし、川嶋に渡した。そこには、ある市長に「棺桶でも大丈夫ですよ」と伝えたやり取りや、大畠章宏・国土交通相(当時)から「国土交通省の枠を超えて政府代表の局として対応せよ」と言われていることが記されていた。
川嶋は「これは公文書っぽくないよなあ」と思いながら、パソコンで打ち込んでいた。
そこへ徳山がやってきて「紙をよこせ」と言い、文書の最後に、手書きで2行を付け足した。
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