ポーリングと妻はどこの国の推奨量と比べても、約30倍の量を摂取していたことになる。
ポーリングは科学誌を調べ上げ、自分の主張に合う結果ばかりを集めた。1970年には、ベストセラーとなる著書『さらば風邪薬!――ビタミンCで風邪を追放』を出版し、高濃度のビタミンCを摂取すれば誰もが健康を改善できると主張した*13。
タイミングも味方した。1960年代後半のカウンター・カルチャーの影響で自然食品、自然療法、代替医療がすでに注目を集めていたのだ*14。
ビタミンCの売り上げは急増した。多くの医療従事者や科学専門家が、確かな証拠はなく、ビタミンCがどのように風邪に効くのかは誰にも説明できないという立場を固持していたにもかかわらず、需要に応えるために新しい工場が建設された*15。
寄せられる批判に対してポーリングは、製薬業界は自社の風邪薬が大きな収益源となっている現状を維持しようとしているだけだと反論した。
真実はどうなのか? システマティック・レビュー(系統的レビュー)では、事前に規定された基準を満たすすべての試験から入手可能なデータが収集される。
2013年、高濃度ビタミンCの風邪への効果を検証したすべてのプラセボ対照試験のレビューで、1万1000人以上を対象とした29件の試験が評価された。これらすべてのデータから導き出された結論は、一般集団において、ビタミンCを摂取しても風邪をひく確率は低下しないというものだった*16。
ただし理由は不明ながらも、ビタミンCを定期的に摂取している人々では、風邪症状の持続期間がわずかに短くなっていた。正確には、ビタミンCを毎日補充することによって成人の場合で8パーセント、小児の場合で14パーセント短縮された。
つまり数日間の風邪の場合、ビタミンCを定期摂取していると症状が数時間早く改善する可能性があるということだ。


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