青緑色のツインテール、ぬいぐるみや缶バッジがびっしりとついた手提げ。それらを身に着けた老若男女が壁いっぱいに並び、チョークのようなものでメッセージやイラストを熱心に書き込んでいく。初音ミクのイラストの隣には、「マジミラ1日目!」「マジミラ4回目です、〇〇より」などと、力強い字が添えられている。
幕張メッセで開催されたイベント「マジカルミライ」の企画展では、平日午後にもかかわらず、会場入り口に長蛇の列ができていた。同イベントは、初音ミクなどバーチャルシンガーによるライブと企画展で毎年ファンを沸かせる。14年目となる今年は東京、大阪、浜松の3拠点で開催され、全世界から数多くのファンを集めた。
この熱狂の中心にいる「初音ミク」をはじめとしたボーカロイドを支えているのが、ヤマハ株式会社(以下、ヤマハ)が開発した歌声合成技術「VOCALOID(ボーカロイド)」だ。メロディーと歌詞を入力するだけでパソコン上で人間に近い歌声を合成できる。
このソフトウェアの開発を担ったのが、1993年に入社した技術者・剣持秀紀氏(59)だ。今ではメジャーとなった「ボカロ」だが、商品化までの道のりは平坦ではなかった。
ボーカロイドとの偶然の出会い
「剣持くん、音声に興味あるかね?」
96年、剣持氏は入社時から関わりのあった上司から突然声をかけられた。ベルギーの合弁会社で音声合成技術の開発に携わらないか、との誘いだった。
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