さらに、高額な服を買う若者を、単純に「背伸びしている」とも捉えにくくなっているという。
「接客していると、若くても自分で起業している方もいますし、会社員でも別の収入の軸を持っている方がいたりする。年齢だけで、その人が使えるお金はわからないですよね」
働き方や稼ぎ方が多様になる一方、お金の使い方も選択的になっている。単純に「高いものを買う」のではなく、自分が価値を感じたものにはお金をかける。高価格帯の古着が若い世代の選択肢に入る背景には、そんな消費感覚の変化もありそうだ。
さらに変わっているのが、価値を判断する基準だ。
PRADAやMaison Margielaなどのメゾンブランドはヴィンテージでも人気だが、単にブランド名だけで選ぶわけではない。若い客の中には、どの年代の商品か、当時誰がデザインを担っていたのかといった背景まで事前に調べたうえで選ぶ人もいるという。
「SNSをはじめ、国内外のファッション情報に触れる接点はかつてより格段に増えました。以前なら雑誌や限られたショップから得ていたような過去のコレクションや着こなしの情報も、今は自分で検索して比較できる。若い方を接客していても、自分でかなり調べたうえで選んでいるなと感じます」
トレンドがなくなったわけではない。その大きな流れを理解したうえで、膨大な情報の中から「自分は何を選ぶか」を判断する。誰かのスタイルを丸ごとまねるのではなく、自分なりに組み合わせるための情報と選択肢が増えたとも言える。
2000年代も若者には十分“昔の服”
象徴的なのが、2000年代の服だ。Hでは、2000年代のC.P. CompanyやStone Islandなどが、特に若い男性客に人気で、入荷後すぐに売れてしまうこともあるという。
「僕らからすると、2000年代ってそんなに昔じゃない。“これも古着なの?”という感覚があります。でも若い人にとっては、自分が生まれた頃、場合によっては生まれる前ですからね」
上の世代が若い頃、1970〜80年代のLevi'sなどに“過去の服”として惹かれたのと、若い世代が2000年代の商品を見る時間的な距離は、それほど変わらない。
しかもC.P. CompanyやStone Islandは、現行品も根強い人気を持つブランドだ。若者にとっては、よく知るブランドでありながら、現在は買えないデザインやシルエットを持つ“一点もの感”のある服でもある。販売当時と同程度、場合によってはそれ以上の価格になっている商品もあるという。


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