価値を生むのは、単に「古いこと」ではない。いま店に行っても買えないこと、そして同じものに簡単には出合えないこと。その希少性や一着ごとの個性が重要なのだ。
こうした“一着ごとの個性”は、年代や希少性だけから生まれるものではない。
そもそも今回の取材の出発点は、「なぜ穴の開いたボロボロのTシャツが高く売れるのか」という疑問だった。
もっとも、「ボロだから高い」という単純な話ではない。近年は新品のコレクションブランドでも、フェードやダメージを意図的に施したデザインは珍しくない。経年変化したような表情そのものが、ファッションのひとつのトレンドになっている。
一方、実際に誰かが着てきた古着には、人工的な加工とは異なる面白さがある。
「デニムのポケットだけ擦れていたら、“前の持ち主がここにタバコを入れていたのかな”と想像できる。VANSの横に穴が開いていたら、“スケートをしていてここが擦れたのかな”と。その一着にしかない背景が見えるんです」
一般的なコンディション評価ではマイナスになりうる傷や汚れも入り方によってはその服にしかない個性になる。つまり「ボロだから高い」のではなく、再現できない履歴や表情に価値を感じる人がいるのだ。
大事なのは「自分が選んだ一着」か
H_VINTAGEのルックを見ると、上階で販売する新品とヴィンテージを自然にミックスし、ひとつのスタイルとして提案している。それは、現在の客の買い方にも重なるという。
「古着を買う」「新品を買う」と分けるのではなく、自分のワードローブに必要な一着として両者を選ぶ人が増えている。
新品のコレクションピースと、誰かが着込んで傷のついた古着。高価格帯の一着と、手頃な価格の一着。そこでは「新品か中古か」「高級か廉価か」といった従来のヒエラルキーよりも、「自分にとって、この服に価値があるか」が優先される。
古着の裾野が広がる背景には、希少品の価格高騰だけではなく、こうした服の選び方の変化もありそうだ。
「みんなが持っているもの」をそのまま追うのではなく、トレンドという大きな流れの中から情報を集め、自分の基準で選び取る。そんな若い世代のファッションとの付き合い方が、「中古だから新品より安い」という一般的なイメージを、少しずつ揺らしている。


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