子どもは、移動手段がなければ塾や習い事、体験活動などへの参加を諦めざるをえず、学びや体験の機会が限られる。また、送迎による保護者の就業制約が所得に影響すれば、家庭の負担で移動手段や教育機会を補うことも難しくなる。こうして親子双方への影響が連鎖し、交通格差が教育格差につながる可能性がある。
先に示した試算では、交通空白によって教育機関などの利用機会が失われることによる将来所得の機会損失を、年間約400億円と見積もっている。この数字は、移動手段の不足が現在の不便にとどまらず、子どもの進学や就業を含む将来の選択肢にも影響しうることを示している。
送迎負担が転居のきっかけに
日本総研では、住まいと教育環境に係る調査を26年3月に実施した。未就学児から高校生までの子どもを持つ保護者に対する調査を実施し、3000件の回答を得た。
本調査において、子育てや子どもの教育環境(学校・療育環境)を主な理由として転居を経験・検討した回答者の19.8%が、「通学・送迎の負担」をきっかけとして挙げた。この結果から、子育て世帯における転居の意向に「移動・送迎の負担」が影響を与えている実態が浮き彫りとなった。
高校の学費や給食の無償化は全国で取り組みが進みつつある。一方、子どもが学びや体験の場へ行くための「移動」は、これまで家庭の送迎に委ねられてきた。しかし、交通格差が教育格差につながる可能性を踏まえると、送迎を家庭内の問題として扱うのではなく、社会課題の一つとして捉え直す必要がある。そこで求められるのは、家庭の送迎負担を軽減し、住む地域にかかわらず、子どもが教育や体験の機会にアクセスできる環境を整えることだ。
日本総研の調査では、既存の対策としては「子どもの移動手段を確保すること」と、「移動しなくても済む対策」の2つの対策の方向性が存在することがわかった。


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