中でも、家族送迎による所得損失や労働力損失の金額が大きい。その規模は年間約6.8兆円と、交通空白による経済損失全体の6割以上を占める。移動手段の不足は、移動する本人の外出を妨げるだけではなく、送迎を担う家族の働く時間や仕事上の機会も奪っているのである。試算の内訳は、以下のとおりとなっている。
家族送迎には、子どもの塾や習い事に加えて、高齢者の病院送迎や買い物サポートなども含まれる。運転できる家族が限られると、特定の家族に送迎の負担が集中してしまう。この特定の家族に依存した送迎負担については、家族のためだからやむをえない、また現金の支出が発生しているわけではないこともあり、その経済的損失が見えにくい状況となっている。
さらに日本総研の調査では、子どもの送迎があるから、出張のある仕事を避けていたり、勤務時間に柔軟性を持たせるため管理職への昇進も断ったりしている、といったケースも散見された。新たな経験を積む機会や、責任ある仕事を引き受ける機会を失ってしまうと、キャリアパスにも影響を与えうる。家族送迎による約6.8兆円の損失は、こうした家庭内に埋もれてきた働くうえでの機会の喪失を可視化した数字なのである。
子どもの「移動できない」が教育格差を生む
子どもの教育や習い事は、保護者が子どもの送迎を負担できるかどうかに依存するが、公共交通機関が脆弱な交通空白地域においては、より深刻な社会課題となる。交通空白地域においては、鉄道やバス等の公共交通機関が撤退や減便される状況にあるとともに、このような地域における送迎は長距離・長時間となるからだ。
こうした交通上の制約がもたらす負のスパイラルを示したものが、下図である。


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