「恋愛もの」「サスペンス」「医療もの」「お仕事もの」という単一の題材だけでは、欲張りな現代の視聴者を満足させることはいまや難しい。いくつかのジャンルを交差させ、出し入れすることで観客の予測を裏切り続け、多様化するニーズに応える手法を駆使しなければ、エンタメ業界はわたっていけない時代である。
『ダウンタイム』は「美容整形(美+医療)」+「ヤンキーもの」であり、昭和の極道映画における『仁義なき戦い』の血脈だ。肉体のぶつかり合いをメスが切り裂く手術に置き換え、凄絶な口喧嘩と罵詈雑言で彩った、かつてない女の“格闘戦”がくり広げられる。
人間のダークな感情がぐつぐつと煮込まれ、壮絶な地獄絵を作り出す
主人公・沼田文(松岡茉優)は、大学病院の救急・形成外科で叩き上げられた天才的なオペ技術を持つ外科医だ。極めて優秀な医者だが、生活態度や口調はヤンキー。つまりヤンドク(ヤンキーのドクター)だ。普段はぶかぶかのジャージを着用し、やたらと喫煙所でタバコを吸っている。そしてアンチ整形派。行き過ぎた整形を「人体に対する侵略」とまで断じる。
「生まれ持った容姿を否定し、加齢を否定し、いったいそれで何が得られるの? 自然に逆らえばツケを払わされるに決まっているのに」
意外と良識派な文が、なぜか美容整形の渦中に身を投じることになる。
きっかけは、ある人気モデルの手術だった。腫瘍のリスクを抱えながらも、胸のシリコン除去を拒むモデル。なにがなんでも「胸(人工物)を死守したい」と願うモデルと、「命を最優先に救いたい」と説く文は激しく対立。その結果、文は病院を追われることになる。
さらに追い打ちをかけるように、実家の義父がつくった「2億円」という莫大な借金が降りかかってきて……。八方塞がりとなった文は大手美容外科グループ「遠山美容外科クリニック」で働かざるをえなくなる。


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