アメリカのスコット・ベッセント財務長官が日本に対して政策金利の引き上げと長期金利の抑制を求めている。一見すると、この要求は矛盾しているように映る。
ベッセント氏は、円安と物価上昇に対処するため、日本銀行に対して政策金利の引き上げを求めてきた。日銀がインフレ抑制に向けて「断固たる措置」を取るべきだという発言もあった。
他方で、日本は大規模な金融緩和と積極財政を組み合わせたリフレ政策から脱却すべきだとも主張している。その理由は、日本の政策に対する不信が日本国債の長期金利を上昇させ、その影響がアメリカを含む世界の債券市場に波及する危険があるからだ。
つまり、一方では「金利を引き上げろ」と言い、他方では「金利上昇を抑えろ」と言っているように見える。ベッセント氏は結局のところ、日本の金利を上げることを望んでいるのか、それとも下げることを望んでいるのか。
「金利」という言葉が内包する2つの性質
上記の疑問が生じるのは、「金利」という1つの言葉で「政策金利」と「長期金利」という性質の異なる金利を一括して捉えるからだ。ベッセント氏の主張を理解するには、日銀が直接決定する短期の政策金利と、市場で形成される長期金利とを区別する必要がある。
政策金利は、中央銀行が物価の安定などを目的として決定する短期金利である。予想物価上昇率に比べて政策金利が低く、実質金利が中立金利を下回っていれば、金融環境は緩和的であると考えられる。
ベッセント氏は、日本では基調的な物価上昇率が高まりつつあるにもかかわらず、政策金利がなお経済・物価情勢に比べて低く、円安やインフレ圧力を強める一因になっているとみている。このため、日銀は経済への影響を見極めながら、政策金利を中立的な水準へ近づけるべきだというのが、その主張だ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。