政策金利の引き上げは、通常であれば将来の短期金利予想を通じて長期金利を押し上げる。しかし、政策金利を適切な時期に引き上げることによって、中央銀行がインフレを放置しないとの信認が高まれば、将来のインフレ不安は弱まる。その結果、タームプレミアムが低下し、長期金利の上昇が抑えられることもある。
このように、政策金利の引き上げと長期金利の低下は同時に起こりうる。重要なのは、長期金利の変化を構成要素に分けて考えることだ。
日銀は6月に政策金利を1%程度へ引き上げた。これによって、ベッセント氏が最初に問題にしていた「政策金利が低すぎる」という状況はある程度変化した。さらに、9月の金融政策決定会合で、追加利上げが行われた。
これが十分な引き上げか、その後どこまで引き上げるべきかは、基調的な物価上昇率、賃金、景気、円相場などを改めて検討して判断すべき問題だ。
しかし、タームプレミアムによる長期金利上昇を抑える必要性は変わっていない。むしろ政策金利の正常化が進むほど、長期金利上昇のうち、将来の短期金利予想による部分と、財政不安によるタームプレミアムの部分を明確に区別することが重要になる。
日本はリフレ政策から明確に脱却せよ
日本が目指すべき方向は、政策金利を無理に低く抑えることではない。日銀は物価安定のために必要な政策金利を独立して決定する一方で、政府は恒久財源を欠いた減税や際限のない歳出拡大を見直し、中期的な財政再建の道筋を示すべきである。
金融政策を正常化しながら、財政規律の回復によってタームプレミアムを低下させる。これこそ、短期の政策金利を適正化すると同時に、長期金利の過度な上昇を抑える道である。
ベッセント氏の要求は、一見したところ「金利を上げろ」と「金利を下げろ」を同時に述べたように映る。しかし、その核心は、政策金利は経済の実態に見合う水準に引き上げ、財政不安が生む余分な長期金利は引き下げよ、ということである。
この議論はタームプレミアムの概念に照らせば整合的であり、IMFの対日提言とも共通する。政策金利については今後の経済情勢に応じて再検討が必要だが、リフレ政策から脱却し、財政への信認を回復して長期金利の安定を図るという課題は、現在もなお正しい。
日本はアメリカからの圧力を単なる内政干渉として退けるのではなく、自らの金融・財政政策を立て直す契機として利用すべきだ。


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