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政治・経済・投資 #野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」

「金利を上げろ、でも下げろ」アメリカが日本に求めた"矛盾"の真意、日本がリフレ政策から明確に脱却すべきこれだけの理由

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ベッセント
ベッセント財務長官(右)は日本に対して「金利」に関する対応を求めた(写真:ブルームバーグ)
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これに対して長期金利(例えば10年国債利回り)は、将来の短期金利についての市場予想と、資金を長期間固定するリスクに対して投資家が要求する「タームプレミアム(上乗せ金利)」から構成される。

将来、日銀が政策金利を引き上げると予想されれば、長期金利も上昇する。この部分は金融政策の正常化に伴うものであり、「悪い金利上昇」ではない。

しかし、財政赤字の拡大、国債発行の増加、インフレの再燃、政策運営の不確実性などに対する不安が強まった場合も、長期金利は上昇する。この部分は、経済の生産性や投資収益率が高まった結果ではなく、投資家が大きなリスク補償を要求するようになった結果である。

したがって、「政策金利を引き上げるべきだ」という主張と、「財政不安による長期金利の上昇を抑えるべきだ」という主張は矛盾しない。前者は短期金利を経済の実態に近づけるための金融正常化であり、後者はタームプレミアムという余分な上乗せ金利を引き下げるための政策信認の回復だからだ。

「望ましくない金利上昇」とは何か

日銀の植田和男総裁は6月と9月に政策金利の引き上げに踏み切った(写真:ブルームバーグ)

タームプレミアムが上昇したために長期金利が高くなったということは、長期債券への投資が以前より有利になったことを意味しない。将来の物価、財政、金融政策などをめぐる不確実性が増大し、そのリスクを引き受ける見返りとして、投資家が以前より高い利回りを要求しているのである。

このような長期金利の上昇は、経済にさまざまな負担をもたらす。国債の借り換えが進むにつれて政府の利払い費が増加し、財政を一段と圧迫する。住宅ローンや企業向け融資の金利も上がり、住宅投資や設備投資を抑制させる。銀行や保険会社などが保有する既発債の価格も下落し、評価損が拡大する可能性がある。財政不安が金利を引き上げ、その金利上昇が財政をさらに悪化させるという悪循環も起こりうる。

しかも、問題は国内だけにとどまらない。日本は世界最大級の対外純資産を持ち、日本の金融機関、年金基金、生命保険会社などは大量のアメリカ国債や欧州債を保有している。日本国債の利回りが上昇すれば、為替ヘッジをして海外債券を保有する魅力が低下し、海外資産を売って国内債券に資金を戻す動きが強まる可能性がある。その場合、アメリカ国債などが売られ、海外の長期金利にも上昇圧力が加わる。

ただし、日本の積極財政が世界の長期金利上昇の主因だというのは行き過ぎだ。アメリカ自身の巨額の財政赤字、欧州の財政問題、インフレ、エネルギー価格、地政学的緊張など、より大きな要因が存在する。

しかし、日本国債市場の変動が国際的な資金移動を通じて海外に波及する経路は、確かに存在する。ベッセント氏が日本の長期金利上昇に強い関心を示すのは、それがアメリカ国債市場とアメリカの借入費用にも影響しうるからである。

2026年2月に公表されたIMF(国際通貨基金)対日4条協議の終了声明も、基本的にはベッセント氏と同じ方向を示している。

IMFは、インフレ率が持続的に2%の目標へ収束するのに応じて、日銀が政策金利を徐々に中立的な水準へ近づけることを支持している。その一方で、巨額の政府債務を抱える日本に対し、財政をさらに緩和せず、債務比率を低下軌道に乗せる信頼できる中期財政計画を求めている。また、世界的な金融環境の引き締まりが日本国債利回りの一段の上昇を引き起こし、金融機関や企業に損失と資金調達費用の増加をもたらす危険にも注意を促している。

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