「モスバーガー」のモスフードサービスによる「和食・酒 えん」や「おぼんdeごはん」などの運営会社、ビー・ワイ・オー(BYO)の買収。このM&Aの裏には、ファンドによる長期にわたる保有と支援のプロセスが存在した。
BYO株を売却したクレアシオン・キャピタルは国内独立系プライベートファンド。2026年8月末での累積投資額は約750億円で、機関投資家に加えて事業家を中心とした個人富裕層からの調達資金を運用する。クレアシオンとBYOは、当初目指していたIPO(新規株式公開)ではなく、なぜ最終的にモスへの売却という出口を選択するに至ったのか。
クレアシオンの辻智史・最高投資責任者に、投資からイグジット(出口戦略)に至る経緯を聞いた。
――そもそもBYOに出資し経営に参画した理由は?
外食業界で独自の存在感があり、大手資本の入っていない独立系企業では「知る人ぞ知る優良企業」であった。「えん」や「おぼんdeごはん」は和食中心。国内はもちろん、将来的には海外へ進出できるポテンシャルを感じ、株式上場を目指せる企業であると考えた。投資したのは15年10月。その1年ほど前に仲介会社に紹介され、提案や交渉を経て決定した。
一方で、BYOの当時の売上高は112億円ほどであり、典型的なオーナー企業だった。現場の運営は優秀な社員が担っていたが、本社部門や管理体制は非常に手薄だった。コンセプト主導で店舗をヒットさせてきたため、組織体制の構築には手が回っていなかった。
その状況でさらなる規模拡大を目指すにはリスクが生じる。そこで、われわれが参画し、規模拡大のための体制を整える提案をした。
オーナー(創業者)も次の成長を見据えてファンドと組む決断をした。私たちの投資後も引退はせずに株式を保有し続けた。元々100%保有していた株式を30%にし、クレアシオンが70%保有する体制となった。
――その後、日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)もBYOに出資しました。
KFCの参画は18年3月末だった。それまでの業績は非常に順調で、並行して管理体制の構築も進めた。18年3月期をIPOの直前期と位置付け、翌年度の上場を目指すタイミングだと考えた。
上場後のイグジットや経営の安定性を考えると、事業面で相乗効果のある安定した株主の存在が望ましかった。「BYOはオーナー企業」という見え方を和らげ、上場後も継続保有してくれるパートナーを探していたところに、KFCとの縁があった。
KFCも当時、FCオーナーに対してKFC以外の新規ブランドや業態を提供したいというニーズを持っていた。BYOと組んでFCパッケージを開発し、オーナーへ展開するというシナジーを期待できたため、BYOが上場を目指す前に株式の25%を譲渡した。これにより、オーナー30%、KFC25%、当社45%となり、当社がイグジットしても安定した株主が残る体制を整えた。
3年連続で予期せぬ事態に
――しかし、BYOの上場には至りませんでした。どのような事情があったのでしょうか。
実は3年連続で予期せぬ障害が発生してしまった。
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