加えて、欧州基準をクリアしながら25年間の長期運用に耐えうる高圧水素タンクの開発・規格化を推進。「高価すぎるタンク」の課題を真っ向から克服し、ライフサイクル全体でのTCOをディーゼル同等へ引き下げにかかっている。
ここまでの話を聞くと、「トヨタは乗用車を諦めて大型トラックに逃げたのか?」と思うかもしれない。山形プレジデントは筆者の問いに、ニヤリと笑って即答した。
「乗用車をやらなかったら、そもそも僕らが水素をやる意味がないじゃないですか」
乗用水素の「民主化」のために
商用車連合を急ぐ真の狙いは、大量に水素を喰う大型トラックを走らせることでステーションの稼働率を引き上げ、インフラの採算ラインを下げ、水素の末端価格を劇的に引き下げることにある。
インフラという土台と燃料の低価格化が実現しなければ、一般ユーザーが乗る乗用車に水素が普及するはずがない。つまり、スカニアやダイムラーを巻き込んだ商用の社会実装は、将来の乗用水素を民主化するための「最大の布石」でもある。
その証拠に、パーソナルユースを見据えたテストの手は一切緩んでいない。日本国内では、2021年から続くスーパー耐久(S耐)の現場で液体水素カローラが極限のレースを走り続け、燃焼技術や航続距離の課題をリアルタイムで克服している。世界耐久選手権(WEC)でも将来の水素カテゴリーを見据えた先行開発が続く。
そして欧州のモータースポーツ拠点の1つ、ドイツ・ケルンの「Toyota Racing」では、現行Rally1のエンジン(GRE)をベースにした水素エンジンの実機開発に加え、エンジンベンチでは基礎研究用の単気筒の水素エンジンがテスト中だ。
今年のル・マン24時間レースでは、液体水素エンジン搭載のプロトタイプカー「TR LH2 レーシング・プロトタイプ」がデモランを行い300km/h以上の速さを見せた。
さらに欧州の公道でテストが進む「水素エンジン搭載ハイエース」は、すでにオーストラリアの過酷な建設現場や日本の公道での実証テストを完了。そして今、欧州特有の超高速走行環境や厳しい排ガス規制のもとで、実走テストが着実に進められている。


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