「やってみたからこそ痛感したのですが、インフラとセットで動かなければ、いくらいいトラックを作ってもお客様は買ってくれません。単にハードウェアを売る時代は終わりました。ステーション事業者やエネルギー会社、行政と組んで『持続可能なエコシステム』にしないと勝てないんです」
山形プレジデントが語る通り、欧州の補助金政策も「ステーションに確実にトラックが顧客単位で紐づいて稼働する証明」がなければ1ユーロも出ない仕組みへとシフトしている。3年前に味わった「ハードを単体で高く売ろうとして失敗した」という教訓が、まさにこの言葉に凝縮されている。
「小さなパッケージであっても、そこで自立して経済合理性が回るエコシステムができれば、あとは自走して増殖していきます。それをハイウェイでつないでいけばいい」
ハード単体の性能競争ではなく、インフラと顧客を同時に押さえ込む“面”の勝負。山形氏の言葉からは、理想論を脱したトヨタの泥臭い本心が伝わってきた。
厳しい「独占禁止法」という壁
結果として欧州メガOEMの8割近くを押さえた水素連合だが、実用化への最大の障壁となったのが、欧州の厳しい独占禁止法(競争法)だった。これを突破するために編み出されたのが、第三者のリーガル仲介機関(クリーンチーム)を設置するスキームである。
各OEMは、将来の車両投入計画や走行ルート予測を匿名・機密扱いでこの第三者機関に提出する。法的に遮断された環境でデータが集約され、インフラ事業者に対しては「欧州のどの地域に、いつ、どれだけの水素総需要が生まれるか」というマクロデータのみが一括開示される。
その結果、1基あたり約10億円にのぼる大型水素ステーションに対し、インフラ事業者が確信を持って投資できる環境を整えたのである。
そして、このエコシステムを完全な社会実装へと昇華させる決定打となったのが、IAAの2日目にトヨタをはじめとする業界各社から正式発表された「欧州の水素モビリティ拡大に向けた、バリューチェーン全体での連携強化」である。


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