このような状況での利上げである。それでも、次への政策動向の意図への示唆はゼロである。記者会見がいい雰囲気になるはずがない。
ウォーシュ議長から華やかさと微笑みは消えた。記者からの笑いも消えた。しかし。FEDのボードメンバーは、一致団結して、これを乗り切りにかかった。この状況で、投票権を持つ12人全員が利上げに賛成したのである。ここでの、全会一致の決定は重い。ウォーシュ議長の危機を組織で支え、救ったのだ。
こうなると、外野からの批判は難しい。批判されてもビクともしない。今後の、FEDの金融政策に対する信頼感、安定感は高まる。それこそが、今の金融政策にもっとも必要なことだ。トランプ大統領も直接的な批判ができなかった。実現性ゼロなのに、利上げが明らかになると「金利を1%にしろ!」と叫んだという事実を残すだけのアリバイ作りの反応になった。
今後、アメリカ経済は厳しい環境に転じるだろうし、AI関連投資で、資金が逼迫し始めた債券市場は非常に苦しい展開となろう。それでも、FEDはそれを乗り切るしかないし、どのような状況になっても、金融政策がふらつく、不確実性を金融政策により作り出す、ということにはならないだろう。
つまり、苦境にあったことで、むしろ、切り抜ける道を自ら作り出すことが、結果的に、できたのだ。
ずっと動くのをためらってきた日銀
一方の、日銀は、正反対の状況である。
日本の異常な低金利。インフレが高止まりする中、実質金利で見ればあり得ない大幅マイナス金利。しかも、戦後最長の景気拡大の下で、だ。利上げをすぐさま行う以外ない。合理的な批判は「ビハインドザカーブ」、つまり、後手を踏んだ、ということだけだ。だから、利上げを止めるものはどこにもない。
それにもかかわらず、日銀は、ずっと動くのをためらってきた。官邸が怖いのか、株式市場のバブル崩壊の責任転嫁をされるのが怖いのか、2年前の夏のトラウマか(同じことか……)、意味不明だが、利上げをためらい続けてきた。
当然、海外市場関係者は「官邸を恐れている」「圧力がかかった」「日銀は世界でもっとも独立性が弱い」、などと散々な批判を浴びせた。しまいには、スコット・ベッセント財務長官に名指しで具体的に金融政策を批判され、利上げを要求された。


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