有料会員登録
政治・経済・投資 #新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場

同じ利上げ決定でもアメリカは「中央銀行が一致団結」、一方の日銀は圧力に屈し、国のトップには危機感なし、もはやこれは国難だ

11分で読める
アメリカに続き日銀も0.25%の利上げを決定。だが、日米2つの中央銀行の置かれている状況、センチメント、気持ち、気構えはまったく違う(写真:ブルームバーグ)
  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
2/5 PAGES

今回の記者会見も、いままでで見たことがないほど、活気のないものだった。

これは、前途多難だ。なぜなら、外部環境が悪すぎるからだ。

景気は強い。金利は既に高い。インフレは依然高い。それにもかかわらず、これまでは利下げを進めてきたが、インフレ再燃により、利下げを中断した。「いつ利下げ再開か、いやまさかの利上げに転じるのか?」と方向感が定まらないところへ、ウォーシュ議長の登場となり、利下げ再開が見込まれると期待が高まった。

そこへ、イラン戦争をトランプが起こし、原油だけでなく、景気面からもインフレ圧力は弱まらず、むしろ利上げが急に必要になってきた。客観的には利上げが必要だ、しかし、ウォーシュなら利下げしてくれるかも、と議論が真っ二つに分かれる中へ、ウォーシュは放り込まれたのだ。

これは、きつい。

周りの期待の、どれか、誰かの分は裏切らないといけない。しかも、利下げから利上げに転じ、またすぐに利下げというわけにはいかない。金融政策における最大の失敗は急激に方向転換することだ。しかも、利下げから利上げに転じてすぐに利下げというのは、その最悪の中でも最悪の失敗なのだ。一方、安易に利下げをして、インフレが加速すれば、これもまた中央銀行がいちばんしてはいけない失敗だ。

また、現在、景気は良い期間が予想を超えて続いており、ウクライナ戦争、イラン戦争と環境がものすごくインフレ寄りなところで、いつ景気が悪くなってもおかしくないときに、利上げをしないといけない。必ず景気は悪くなる。インフレも、その半分以上は供給側の要因で、金融政策では直接はコントロールできない。必然的にスタグフレーション(景気停滞下のインフレ)的になる。でも、利上げをしないといけない。必ず、「景気が悪くなったのはおまえのせいだ」と、その利上げが責められる。

中央銀行にとっては、もっとも難しい、しかし、いちばん頻出する難しい状況なのだ。このときに、ウォーシュ議長は、コミュニケーション改革、そのほかの政策スタイルの構造転換を目指す改革を開始した。

タイミングが悪すぎる。就任直後しか、改革を打ち出すタイミングはない。しかし、外部の経済環境は、それに適していない。ウォーシュ議長は、一生、改革はあきらめるべきだったかもしれない。

3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数