世界の軍隊から見ると防衛省・自衛隊は極めて奇異なのだが、その奇異な組織からレクチャーを受けて勉強するので、ある意味記者たちは「洗脳」されている。したがって、軍事的な常識が欠如する。「自衛隊の常識は軍隊の非常識」である。
筆者は軍事の取材を海外から始めた。外国でつたない英語で取材しても話が通じるのだが、市ヶ谷の人たちとは日本語で話していても通じないことが多く驚愕することが多かった。
例えば、小泉純一郎内閣(在任2001~06年)時代、当時はいわゆる有事法、国民保護法ができるまで、法的な問題があったゆえに自衛隊は塹壕を掘ったり、野戦病院を使うことができなかった。塹壕を掘るには地権者と話し合い、補償を決めてからになる。それには長い時間がかかる。
また野戦病院は医療法の定める病院の基準を満たしていない。だから使用できない。ところが防衛省も自衛隊も、それを異常だとは思ってこなかった。普通の軍隊からすれば、それこそ異常だ。筆者がこの話を外国の軍関係者に話すと、一様に「それでどうやって戦うのだ」と驚愕した。
だが、防衛省も自衛隊も延々とそれが当たり前で制作を立てたり演習を行ってきた。それに対して、記者クラブもほとんど疑問を持ってこなかった。
記者が知るのは「奇異な」組織からの奇異な組織論だけ
また無線やドローンで使用される無線周波数帯が適切なものではないため、自衛隊のドローンは落下しやすく、電波妨害に弱い。それなのに、周波数帯を変えることなく、輸入するドローンをスペックダウンして規制に合わせてきた。こんなことをしているのは自衛隊だけだ。
ところが「そのような実態はない」と防衛省・自衛隊は「大本営発表」を繰り返してきた。このような指摘をわれわれ専門記者はしてきたが、記者クラブはつい最近までしてこなかった。
基本的な軍事の素養がなく、普段から軍事知識を得ようと努力せず、防衛省と自衛隊からバイアスのかかったレクチャーを受けるだけでは、蓄積されるのは軍事の知識ではなく防衛省・自衛隊に対する知識でしかない。
当局は自分たちに不利な話はしないものだ。それなのに、それを丸ごと信じてしまう。そこを疑う知見や軍事的な教養は身に付かない。本来記者の仕事は疑うことだ。そこからすべてが始まる。防衛省の言うことをそのまま信じて記事を書くのはジャーナリズムではなく、広報である。
本来であれば、専門記者にこそ記者会見や各種のレクチャーに参加させるべきだ。ところが多くの役所では専門媒体やフリーランスの専門記者を参加させない。筆者は「ドイツの軍事専門誌の記者」という形で外務省の記者証を持っているので会見には参加できる。このシステムは民主党政権(2009~12年)で採用された。それ以前は、外国のメディアも参加記者会見に参加できなかった。
現在フリーランスなどの記者が防衛省の大臣会見に参加ができるようになったのは、筆者や寺澤有、布施祐仁、三宅勝久、畠山理仁(みちよし)などの著名なフリージャーナリストらが防衛記者クラブと防衛省に働きかけたためだ。
防衛省記者クラブも18年12月17日に、「十分に経験のある記者であれば会見に参加してもよい」としていた。ところが防衛省側が「セキュリティー上の問題がある」とハードルを上げたのだ。
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