軍艦の保安にも乗員を必要とする。他国官憲の立ち入りや海軍による捕獲に武器を用いて抵抗する。捕獲必至となれば回避のために自沈する。それには人間を乗せる必要がある。
義務である救難実施にも、人間は必須である。無人艦では漂流者の救助もできない。それでは軍艦旗を揚げた軍艦の沽券に関わる事態である。
「さくら」級は傑作艦とは言えないそれだけの理由
ここまでみると、「さくら」級は傑作艦と言えるのだろうか。実は、そうでもない。艦艇整備としてみると不徹底が目立つからだ。
第1に、外洋活動への備えが足りない。何よりもうねりに弱い。これは波長が異様に長い波だ。荒天時には小型の船舶が木の葉のように弄ばれる原因である。
「さくら」級は全長が短いため、これを乗り越えられない。海自は「うねりの中で安定航行するには全長130メートル以上が必要」と説明してきた。その全長は90メートルしかない。
そのため荒天時には額面通りの速力は出せない。状況次第では15ノット、時速27キロメートルも難しいだろう。中国軍艦は054A/B型でも全長134メートルある。そうなれば引き離される事態が発生する。
乗員の生活にも影響は及ぶ。例えば30年前に退役した全長93メートルの「ちくご」級護衛艦は、「荒天時は配膳困難となるので食事すら厳しくなる」という話があった。そんな影響も十分に考えられる。
第2は、省力化の不徹底である。「さくら」級は自律航行や遠隔操作に対応せず、将来対応する準備もない。
海自の人員不足からすれば問題である。まず、乗員数を30人から減らせない。現在搭載している自動航海システムは単なる自動操舵である。人間による見張りや最終判断を省略できない。
また柔軟な運用もできない。例えば港湾間の移動は艦長と士官2人で3人、あるいは下士官兵3人を足しても6人ですませる。そのうえで実働で監視追跡となった際には、ヘリで残り27人や24人を追加するやり方もできない。
第3は、多用途性の不徹底である。哨戒艦には「雑用艦」としての機能も必要である。平時の監視に対応するだけではない。戦時には軽輸送や上陸戦支援、機雷作戦、沿岸・港湾防備を担当する戦力だからだ。実際に諸外国の哨戒艦、英語でいうOPV、オフショア・パトロール・ヴェセルはそのように作っている。
しかし「さくら」級には、その配慮が少ない。軽輸送や上陸戦支援の発想はない。公表の限りでは、陸自隊員のベッドの準備はない。艦尾の舟艇収納庫も奥行きは短く、出入り口も小さい。小型の上陸用舟艇でも搭載できない。
機雷関連の準備もない。本来なら潜水員による機雷除去の準備が望ましい。だが、処分用爆薬の保管設備や潜水病発生時に使う治療タンクの準備も公表されていない。
何よりヘリ搭載への配慮がない。ヘリを搭載できれば、軍艦の能力は飛躍的に拡大する。軽輸送や機雷除去どころか、本格的な対潜水艦作戦すら可能となる。
しかし、現状では発着艦と給油しかできない。望遠鏡式の伸縮型格納庫でもあれば簡単な搭載運用はできるが、それをしていない。

