……と、東大受験に至るまでのあらすじをたどってみたが、これはほんの一部分にすぎない。実際には学校でも家庭でもいろいろなことが起こり、それでも著者と妹は負けずに生きていく。
そんななか、父親も少しずつ穏やかさを取り戻していき、受験の直前には「孝弥、信じているからな」と声をかけてくれる。そして結果的に著者は東大法学部に合格し、そればかりか妹も翠嵐高校に合格したのだった。
苦難はきっと乗り越えられる
受験勉強の仕方についてもわかりやすく解説されているため、受験生やその親にもきっと役立つことだろう。とはいえ本書は、決して「受験本」ではない。
それどころか冒頭でも触れたように、著者が東大合格を実現するまでのプロセスを明かしたライフストーリーである。そして、壊れかけた家族が再生していくさまを描いたファミリーストーリーでもある。
余談ながら、文章が読みやすく構成にも無理がないので、「Netflixで映像化してくれたらいいのにな」と感じたりもした。きっといい作品になるだろう。
それはともかく、(東大受験であるかどうかは別としても)似たような苦難に直面している中高生はきっと少なくないはずだ。事実、私もこの十数年で何度か、「本来であれば子どもが背負わなくてもいいもの」を背負いながら生きている子どもを何人か見てきた。そういう子たちがなにかを諦めていることを知り、やるせない気持ちになったこともある。
つまり、いまはそういう時代なのだ。しかし、それでも希望はある。どん底にしか見えない状況から這い出す手段も、どこかにきっとある。本書で明かされていることが、まさにそれだ。
だからこそ、受験生からビジネスパーソンまで、いや、なんらかの壁に直面しているすべての人に、本書を読んでいただきたいと強く感じる。
陳腐な表現で恐縮だが、本当に心を打たれた。


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