有料会員登録
ライフ

「マナー違反じゃね?」 映画館、フェス、一口馬主… 日本各地で「マナー警察」が増殖し「マナー論争」が頻発する文化論的理由

7分で読める
映画館のマナー違反
離席、私語、ポップコーンの咀嚼音… 映画館でのマナーをめぐる論争が後を絶ちません(写真:Fast&Slow/PIXTA)
  • 境 治 メディアコンサルタント
2/4 PAGES
3/4 PAGES

数は少ないが、「集中できる強制力」が堂々の2位。お金を払ってスマホをいじれない集中空間を手に入れる。そんな人たちが15%、確実に存在する。

その人にとって隣席の光や物音は、マナー違反である以前に、買ったはずの「強制力」を侵されることを意味する。怒りが驚くほど強いのは、そのためだろう。

「映画館の常識」はもう存在しない

さらに厄介なことがある。同調査では、ライブ・ビューイング(映画館での音楽ライブ、芝居などの鑑賞)の経験者が35.5%にのぼり、その最大の魅力として「現地の会場にいるような、ファン同士の一体感・拍手」が51.0%で挙げられている。

ライブ・ビューイングでは映画館がファン同士盛り上がる場所になるのだ。同じ箱の中で、正反対のスタイルが併存している。

通常の映画では拍手も声出しもマナー違反だが、ライブ・ビューイングや応援上映では一体感こそに価値がある。声を出してよかった同じスクリーンが、物音ひとつ立ててはいけない場所にもなる。

「映画館とはこう振る舞う場所だ」という単一のモラルは、すでに成り立っていない。映画館のマナー論争が毎回着地せず、数カ月後に同じ形で再燃するのは、この根本的なズレがまったく解消できていないからではないか。

博報堂メディア環境研究所が9月4日のウェビナーで示した見立てが興味深い。コロナ禍後、メディア環境のデジタル化が進むほど、フィジカルなイベントが活況を呈しているというのだ。

25年のプロ野球の年間入場者数は2704万人で過去最高。Jリーグは1350万人で、2年連続の最高値。Bリーグも525万人で過去最高。ライブの年間入場者数も5999万人で記録を更新し続けている(上から順に、一般社団法人日本野球機構、公益社団法人日本プロサッカーリーグ、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会の調査結果)。

同研究所はこれを、デジタルとフィジカルをかけ合わせた新しい「情報圏」が生まれつつある兆候と見る。その論を参考にすると、デジタル発で文化の楽しみ方を知り、それをフィジカルにも楽しもうとして、さまざまなイベントに行く人が増えているといえそうだ。

4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数