数は少ないが、「集中できる強制力」が堂々の2位。お金を払ってスマホをいじれない集中空間を手に入れる。そんな人たちが15%、確実に存在する。
その人にとって隣席の光や物音は、マナー違反である以前に、買ったはずの「強制力」を侵されることを意味する。怒りが驚くほど強いのは、そのためだろう。
「映画館の常識」はもう存在しない
さらに厄介なことがある。同調査では、ライブ・ビューイング(映画館での音楽ライブ、芝居などの鑑賞)の経験者が35.5%にのぼり、その最大の魅力として「現地の会場にいるような、ファン同士の一体感・拍手」が51.0%で挙げられている。

ライブ・ビューイングでは映画館がファン同士盛り上がる場所になるのだ。同じ箱の中で、正反対のスタイルが併存している。
通常の映画では拍手も声出しもマナー違反だが、ライブ・ビューイングや応援上映では一体感こそに価値がある。声を出してよかった同じスクリーンが、物音ひとつ立ててはいけない場所にもなる。
「映画館とはこう振る舞う場所だ」という単一のモラルは、すでに成り立っていない。映画館のマナー論争が毎回着地せず、数カ月後に同じ形で再燃するのは、この根本的なズレがまったく解消できていないからではないか。
博報堂メディア環境研究所が9月4日のウェビナーで示した見立てが興味深い。コロナ禍後、メディア環境のデジタル化が進むほど、フィジカルなイベントが活況を呈しているというのだ。

25年のプロ野球の年間入場者数は2704万人で過去最高。Jリーグは1350万人で、2年連続の最高値。Bリーグも525万人で過去最高。ライブの年間入場者数も5999万人で記録を更新し続けている(上から順に、一般社団法人日本野球機構、公益社団法人日本プロサッカーリーグ、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会の調査結果)。
同研究所はこれを、デジタルとフィジカルをかけ合わせた新しい「情報圏」が生まれつつある兆候と見る。その論を参考にすると、デジタル発で文化の楽しみ方を知り、それをフィジカルにも楽しもうとして、さまざまなイベントに行く人が増えているといえそうだ。


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